横浜国立大学と新東工業の研究グループは,レーザーピーニングと呼ばれる表面改質法により,金属材料の表面欠陥を強度上無害化する手法を開発した(ニュースリリース)。
これまで,金属材料の疲労強度向上のためにショットピーニングが幅広く用いられてきた。レーザーピーニングは,航空機や輸送機器への応用が期待されているが,本格的な産業応用には至っていない。また,レーザーピーニングによる金属材料の疲労強度向上に関する研究は行なわれていたが,表面欠陥の無害化に着目した研究は行われていなかった。
そこで研究グループは,アルミニウム合金にレーザーピーニングを施工することにより,表面から0.6mm程度の深さまで圧縮残留応力を導入した。その後,半円スリット(き裂状の表面欠陥)を導入し,疲労試験を行なった。
レーザーピーニングを行なった場合,深さ0.4mmの半円スリットを導入しても,疲労強度が低下しないことを明らかにした。つまり,深さ0.4mm以下の半円スリットを強度上無害化できることを明らかにした。
レーザーピーニングにより導入された深くて大きな圧縮残留応力の効果により,アルミニウム合金の疲労強度を最大で5倍まで向上させることに成功した。従来の方法であるショットピーニングでは深さ0.1mmまでの半円スリットの無害化が限界であったため,今回の研究でレーザーピーニングの有用性が実証された。
この研究で用いたレーザーピーニングは,ショットピーニングとは異なり,投射材を回収する必要がないことや,複雑な形状の部材に対しても,高精度な施工ができるという特長がある。
特に,疲労き裂が生じやすい溶接部や切欠き部に施工することにより,部材の疲労破壊の防止が可能となるため,機械構造部材の信頼性向上が可能となるとしている。