東大ら,光電子分光法で金属の絶縁体化を解明

東京大学,広島大学,中国 清華大学,米イリノイ大学の研究グループは,本来金属であるビスマスの結晶が,ナノスケールまで薄くなったときに絶縁体に変化するメカニズムの完全な解明に成功した(ニュースリリース)。

物質が電気を流すかどうかは,バンドギャップと呼ばれる,電子が存在できないエネルギー帯が存在するかどうかで決まる。このため,もともとバンドギャップを持たない金属でも,原子や分子の大きさであるナノスケールまで小さくすると,電子のエネルギーが飛び飛びになりバンドギャップを持つ絶縁体になりうる。

この現象はビスマスの結晶を舞台に半世紀以上前に予言され,数多くの実験が行なわれてきたが,従来の理論で説明できない結果が得られていた。この解決のために,電気伝導の測定に留まらない,物質の電子状態を直接観測する研究が待たれていた。

研究グループは,非常に高品質なビスマス薄膜を作成すること成功し,広島大学射光科学研究センターのビームラインBL-9Aおよび台湾の放射光施設NSRRCのビームラインBL-21B1にて,様々な厚みの膜における電子状態を光電子分光法により直接観測した。

光電子分光法は,電子の持つエネルギーと運動量を同時に測定し,電子状態の情報を画像として表示できる実験手法。比較的厚い40-80nmのビスマス薄膜では連続的に分布していたものが,3.6-7.2nmの超薄膜では離散的な縞模様を成し,エネルギーギャップを形成する様子が一目で分かる。これはナノスケールでのエネルギーの量子化によって金属が絶縁体化する過程を直接観測した初めての実験となる。

さらに,量子化されたエネルギー値の振る舞いが,従来の理論予測と全く異なっていることが分かった。この研究では,ビスマス結晶の表面に存在する特殊な電子状態の影響を考えることで,この振る舞いが理解できることが分かった。膜の厚みを薄くしていっても表面は常に変わることはなく,逆にその影響が相対的にどんどん強くなっていく。

ナノスケールにおける表面の重要性は以前から知られていたが,今回の研究によって金属から絶縁体への変化を促進することが初めて明らかになった。この結果は,従来の電気伝導測定で得られていた矛盾を解決し,半世紀にわたり研究されてきたこの現象の完全な描像を与えるものだという。

またこの研究は,トポロジカル物質によるナノデバイス設計における新たな視点をもたらし、次世代のエレクトロニクスに向けた知的基盤となるとしている。

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