東北大,非線形力学モデル同定の新手法を開発

著者: higa

東北大学の研究グループは,非線形力学のスパース同定に関する新しい計算手法をエネルギーとラグランジアンを用いて開発した(ニュースリリース)。

未知のデータから物理法則を獲得する試みはこれまで長く行なわれてきた。2009年発表の実験データでは,物理法則に関する解析的方程式をシンボリック回帰により実現したが,計算時間が膨大であるという問題点があった。ニューラルネットワークを用いたブラックボックスモデルによるアプローチは近年も継続して行なわれているが,入出力関係しか明らかにならないという根本的な問題がある。

非線形力学のスパース同定(SINDy)が近年提案され,解析的方程式を導くホワイトボックスのアプローチとして注目されている。研究グループは,先行研究でまだ試みられていないエネルギー推定を介してラグランジアンを導く手法を非線形力学のスパース同定に取り入れた Lagrangian- SINDy を新たに提案した。

非線形力学同定の検証によく使われるカート振り子,二重振り子,球体振り子の運動データを用いて,解析的力学方程式が獲得できるかどうかを検証した。先行研究と比較し獲得されたモデルの複雑性を比較した。

よりコンパクトなモデルを獲得できることは,無駄のない正確なモデルを実験データのみから再現できることを示す。提案手法はどの非線形力学対象に対しても無駄のない正確な力学モデルを実験データのみから同定できていることが分かった。

ビッグデータや機械学習の発展から,今後ますます実験データから得られる時系列データをモデリングする手法のニーズは高まっていく。現在,ニューラルネットワークを用いたブラックボックスにより近似モデルを推定する手法が盛んだが,入出力関係のみの推定となり解析的に用いることができる用途は限られる。

この研究ではエネルギーベースのスパース同定と機械力学に基づくエネルギーからラグランジアンへの変換により対象の力学をホワイトボックスとして獲得できるため,非線形力学解析に貢献しうるという。この研究はまずエネルギー保存系での実現であるため,今後エネルギー散逸系での実現が期待される。

また高次元空間での探索にはブラックボックスモデルの手法も重要であり,運動シナジーの発現が深層強化学習でも存在することが確認された。今後はブラックボックスとホワイトボックスの両アプローチの融合が望まれるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 愛媛大,視野検査AIで検査時間短縮と高精度化を実現

    愛媛大学の研究グループは,視野検査を制御する視野検査AIのViFT(Visual Field Transformer)を深層強化学習するフレームワークの構築を行ない,ViFTは従来の手法と比較して半分以下の時間で同等以上…

    2025.09.25
  • NTT,微小な振動子間の同期を光でリアルタイム制御

    NTT,微小な振動子間の同期を光でリアルタイム制御

    日本電信電話(NTT)は,メガヘルツ帯の機械振動をレーザー光により自在に励起・制御できるオプトメカニカル素子を用いて複数の同期状態の生成に成功し,それらの間を瞬時に遷移させる技術を実証した(ニュースリリース)。 独立な2…

    2025.09.22
  • NTT,情報と人間にかかわる最新技術について紹介

    日本電信電話(NTT)のコミュニケーション科学基礎研究所は,最新のR&D関連の取り組みを紹介する技術イベントを5月21日~5月22日かけ,大阪にあるNTT西日本の本社ビルで開催する。これに先立つ5月13日,イベン…

    2025.05.19
  • 理研ら,マグロ刺身の食べごろを散乱光で評価

    理化学研究所と広島大学は,非線形光散乱現象を魚肉の鮮度評価に応用し,マグロが熟成する過程における筋肉分解の進み具合を定量化する新技術を開発した(ニュースリリース)。 生魚の鮮度は味や安全性に大きく関わる重要な要素となって…

    2025.02.26
  • 筑波大ら,トポロジカル相からカオスへの転移を発見

    筑波大学と東京大学は、非線形なトポロジカル物質を理論的に解析することで,それがトポロジカル相からカオスへの転移を起こすことを明らかにした(ニュースリリース)。 物理学において,トポロジーの考え方は幅広く応用されている。ト…

    2025.01.30
  • 金沢大ら,光AIを用いたイメージ処理技術を開発

    金沢大学と埼玉大学は,リザバー計算と呼ばれる小脳を模したニューラルネットワークを実装した光集積回路などに基づいて,サブナノ秒の時間スケールで起こる超高速現象をリアルタイムに認識・検出できる新しいマシンビジョン技術の原理実…

    2023.09.20
  • 香川大ら,シリコン光集積回路で量子分類器を検証

    香川大学,慶應義塾大学,情報通信研究機構(NICT)は,シリコン光集積回路を用いた,ユニバーサルな量子分類器の原理検証実験に成功した(ニュースリリース)。 機械学習の手法を量子回路へ適用した量子機械学習アルゴリズムにおい…

    2023.07.10
  • 東北大,未知のデータからの物理法則抽出に知見

    東北大学の研究グループは,ノイズのある計測データからでも力学系のラグランジアンを獲得し,その運動方程式の解析的モデルを獲得可能であることを示し,データのみからプロキシマル勾配法を用いてスパースなラグランジアン表現を得るこ…

    2023.06.02

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア