埼玉工業大学の研究グループは,再生可能エネルギーを高い効率で利用する研究・開発として,自然エネルギーの蓄電に適した「レドックスフロー電池」を同学「ものづくり研究センター」に設置し,3月11日より実証実験を開始する(ニュースリリース)。
「レドックスフロー」という名称は,Reduction(還元)とOxidation(酸化),Flow(流れ)の短縮表現。今回のシステムでは,板状の電池セル40枚を1セットとした電池本体(セルスタック)を1つ設置して,太陽光パネルで発電した電力を蓄電する。
「レドックスフロー電池」は,リチウムイオン電池とは異なる原理により,電池反応に関する部材の劣化がないため,充電や放電を繰り返しても長寿命であり,不燃性の材料によって電池が構成されているので,爆発や発火といった現象が起こらないため,安全性にも優れた特長がある。
また,この電池の容量は,セルスタックを大きくすることなく,電解液タンクに貯める電解液量を増やすことにより電池の大容量化が可能となる。さらに,電解液が各電池セルと電解液タンク間を循環して充電および放電をする仕組みのため,各電池セル間の充電度合いが均一化されて,高負荷の変動への対応にも優れていることから,電力の変動の大きい自然エネルギー用の蓄電池として適している。
この蓄電池システムが実用化されると電力の地産地消が可能になり,近年,地震や台風・豪雨など自然災害による停電が発生する中,自治体庁舎や避難所などの防災拠点や公共施設,病院など停電が許されない施設等において,災害時の非常用電源としても有効となる。
今回,同学に設置した太陽光発電とレドックスフロー電池を連動させた電力需給システムでは,太陽光発電で得られた電力を館内照明用に給電すると同時に,余った電力はレドックスフロー電池に蓄電することができる。
また,館内消費の必要量に対して太陽光発電だけでは足りない場合(曇りの日など)は,レドックスフロー電池から自動的に放電を開始し,太陽光発電の電力と合わせて館内照明に給電できるシステムとして稼働する。この両方の動作に効果的に対応するレドックスフロー電池の充電と放電の利用を可能にした実用的な実証実験を実施するとしている。