東大,赤外線でマウスの運動を自動測定

東京大学の研究グループは,赤外線カメラを用いて複数の通常ケージ内で,非侵襲・無拘束の自然な状態で飼育されているマウスを同時に24時間撮影し,その動画から自動的に自発運動量を測定するシステムを確立した(ニュースリリース)。

マウスの自発運動は,マウスの健康状態や精神状態を反映する重要なパラメータとなる。現在使われている実験動物の自発運動量の評価方法として,赤外線センサーによる動きの検出,ケージ内に設置した回転かごを回した数の測定,肉眼による観察などが挙げられる。

しかし,これらの方法には,特別な装置や解析ソフトウェアを使用する必要がある,感度が低い,通常の飼育環境下で測定できない,ヒトが長時間観察できない,など様々な問題点がある。この研究では,通常の飼育環境下で長時間,かつ簡便にマウスの自発運動量を評価する方法の開発を試みた。

複数のマウスをケージで個別に飼育し,赤外線を認識できるビデオカメラを用いてマウスの動きを撮影した。昼間はLEDライトを,夜間は赤外線ライトを飼育室内に照射した。撮影した動画をフレームごとに分割し,各フレームにおけるマウスの重心を算出した。1秒ごとの重心の移動量をマウスの行動量とした。

24時間の撮影を行なってマウスの自発運動量を解析したところ,マウスは活動的な時間と,休んでいる時間を何回も繰り返すこと,昼間(明るい)よりも夜間(暗い)の運動量が多いことが確認できた。また,自発運動量が時間とともにどのような周期で変化しているのかを解析することにより,マウスが活動している時間と,休んでいる時間を自動的に分類することができた。

このシステムを用いて薬剤投与が自発運動に与える影響を評価した。マウスに中枢神経興奮薬であるカフェイン(25mg/kg)を投与すると,投与3時間後まで自発運動量が顕著に増加し,その後減少した。鎮静薬であるクロルプロマジン(5mg/kg)をマウスに投与すると,自発運動はほぼ消失し,その効果は投与8時間後まで継続した。

この研究によって,動画から自動的にマウスの自発運動を解析できる方法が確立された。また,この方法を用いることで,薬剤投与後の自発運動の解析も可能であることも示された。

この研究成果は,動物を用いた実験の省力化およびスループット性の向上につながることが期待されるという。また,動物にかける負荷もより少ないことから動物福祉の観点からもこの方法は優れているとしている。

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