福井大学はSiウエハー成膜のケイ・エス・ティ・ワールドとウェアラブルティスプレー(スマートグラス)用の超小型光学エンジンを開発している。この構成部品のうち,超小型RGB半導体レーザー光源をHUDやピコプロジェクター向けとして,今年中にサンプル出荷を開始する。
福井大学では,ウェアラブルディスプレー向けに,光通信の波長多重などに用いられる方向性結合器型スイッチを利用した導波路型三原色合波器の開発を進めてきた。今回製品化を進めるレーザーは,この合波器と組み合わせたもの。サイズは11.0mm×4.3mm×3.0mmで,体積は0.141ccとなっている。
レーザーの出力はRGBそれぞれ10mW。合波器のサイズは30µm×1000µmと超小型なため,RGBのレーザーはそれぞれ3辺に取り付けられている。合波器はSiO2に屈折率を操作するための材料をドープした素材でできており,導波路の幅は1~2µmとなっている。
福井大学では,このレーザーと合波器にレーザー走査のためのMEMSミラーを取り付けた超小型光学エンジンと,ホログラフィック反射板を組合わせたウェアラブルディスプレーの開発を進めてきた。瞳に直接像を投映する方式なので,視力に関わらず鮮明な画像が見えるという。
しかし,MEMSミラーに適切な大きさでかつ所望の周波数で動作するものが見つかっておらず,今回先行してレーザーと合波路のユニットを発売することとした。用途としてディスプレーやプロジェクターの他,レーザー顕微鏡やセンサーなども見込んでいる。販売はベンチャーを設立して行なう予定。
今回のレーザーは超小型化に成功しているが,ウェアラブルディスプレー用としてはまだ改善の余地があるという。具体的には,実装技術の改善によりさらに小さくなる可能性があること,また,網膜に投映するにはレーザーの出力をもっと小さくする必要があり,これは同時にバッテリーの使用時間が伸びるメリットにも繋がる。
網膜投射型のウェアラブルディスプレーの製品化ではQDレーザが先行するが,福井大学では光学エンジン,ホログラフィック反射板,駆動回路,バッテリーの全てを搭載した眼鏡を開発することで,実用化が進むウェアラブルディスプレー業界に一石を投じたい考えだ。