筑波大ら,X線などで生物大量絶滅の原因特定

著者: higa

筑波大学,高知大学,京都大学,海洋研究開発機構,日本原子力研究開発機構 ,量子科学技術研究開発機構,高輝度光科学研究センターの研究グループは,白亜紀―古第三紀(K-Pg)境界層試料について,放射光を利用した蛍光X線微量元素マッピング分析,中性子放射化分析,質量分析計全岩元素分析を行ない,隕石衝突直後の地球環境変動のうち,大規模な酸性雨が実際に発生していた証拠を発見した(ニュースリリース)。

K-Pg境界における恐⻯を含む生物の大量絶滅は,巨大隕石の衝突に伴う環境の激変(太陽光遮断,温暖化,酸性雨など)が引き金となっている。しかし,どのような激変が最も生物相に影響を与えたのかは,これまで不明だった。

この研究では,イリジウムをはじめとする親鉄元素が高濃度で含まれる,デンマーク王国にある海岸沿いの断崖Stevns Klintに露出するK-Pg境界層の試料に対して,大型放射光施設SPring-8における放射光を利用したμmスケールでの微量元素マッピング分析を行なった。その結果,K-Pg境界層には,銀・銅に富む微粒子が,それぞれ独立に存在することが明らかとなった。

銀や銅は⻩鉄鉱(FeS2)などの硫化鉱物に取り込まれやすい親銅元素であり,K-Pg境界層でも,これらの親銅元素は⻩鉄鉱粒子に含まれている。一方で,⻩鉄鉱とは別個に粒子を形成している銀や銅は,酸に溶けやすい元素であることから,これらの粒子の存在は,大規模酸性雨によって大陸から溶け出した銀や銅が大量に海洋に流れ込んだことを意味している。

さらに,Stevns KlintのK-Pg境界層においては, 銀や銅の濃度がイリジウム濃度と高い相関関係を持つことから,銀や銅の濃集は,イリジウムの濃集(隕石衝突)と同時期だったことが分かった。

衝突によって地表にばらまかれた隕石由来のイリジウムは,ほとんどは固体微粒子に存在しているため,海洋底に沈降して堆積物に取り込まれることにより,比較的短期間に海洋から除去されたはずだという。

同様に,隕石衝突により,地表や破砕岩石から放出された三酸化硫⻩や一酸化窒素が,隕石衝突後の短時間で大規模酸性雨をもたらしたと考えられ,これにより,銀や銅が海洋に大量供給され,その環境激変が生物大量絶滅を招いた可能性が示された。

Stevns Klint以外のK-Pg境界層試料にも,この研究で適用した化学分析を行なうことで,K-Pg境界で発生した酸性雨の規模や継続時間を定量的に明らかにすることができる。加えて,K-Pg境界以外で起こった生物大量絶滅にも親銅元素の異常濃縮が見出されており,これらの大量絶滅と巨大隕石衝突との関連についての議論が進むことが期待されるとしている。

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