東邦大ら,キラル磁性体にナノ磁気渦と運動を発見

東邦大学,広島大学の研究グループは,キラル磁石中に形成される新しいタイプのナノ磁気渦構造とその特殊な運動を発見した(ニュースリリース)。

この研究では,カイラル磁性体と呼ばれるねじれた磁化構造を有する磁性体中の新しい磁化構造とその特殊な磁化ダイナミクスを,数理計算を用いた理論的研究により明らかにした。

通常の強磁性体中では,それぞれの原子の磁化の向きが揃う場合にエネルギーが低くなる。一方で,結晶の空間反転対称性が破れた系では,隣り合う磁化がねじれた磁化配置をとる場合にエネルギー的に安定となる場合がある。このような相互作用は,ジャロシンスキー・守谷相互作用と呼ばれ,新規磁気物性を生み出す原因となっている。

ねじれた磁化構造として,1次元的な螺旋構造や2次元的な磁気渦構造が知られている。特に,磁気渦構造は,磁気スカーミオン構造と呼ばれ,磁化構造が非常に安定であることから,新規スピントロニクス素子への応用が期待されている。
 
これまで報告されている磁気スカーミオン構造は空間的に対称な構造だったが,今回の研究で,系に異方性がある場合に非対称なスカーミオン構造が表れることを明らかにした。

この非対称スカーミオン構造は,円形のコア部分とそれの周りに広がる三日月部分で構成される。このような内部自由度が付加されることで,スカーミオンに多彩な物性が表れることが示された。

例えば,通常の対称スカーミオン間には斥力が働くため,多数のスカーミオンがある場合には三角格子状の細密充填構造をとるが,非対称スカーミオンの場合には,スカーミオン間の相対角度によって斥力・引力両方の力が加わることが分かった。

このような相互作用によって,多数の非対称スカーミオンがある場合には,チェーン状の1次元的なスカーミオン結晶が表れることが明らかになった。また,電流により誘起される非対称スカーミオン構造の磁化ダイナミクスにおいて,回転運動が表れることが明らかになった。

これは,コア部分と三日月部分で電流から受けるトルクに差があるためで,常にコア部分が進行方向の先に進むことによって起こる。このような回転運動は,バドミントンのシャトルの運動に非常によく似ている。

さらに,このような非対称スカーミオンを量子細線中の磁化デバイスとして利用する場合,界面でのエネルギー障壁により,非対称スカーミオンが安定して存在できることが分かった。
 
今回の研究によって,非対称スカーミオンが新規スピントロニクス素子として非常に有用であることを示すと共に,カイラル磁性体中の新しい磁気相の存在を明らかにしたとしている。

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