京都大学の研究グループは,環化重合後の変換によって主構造が1種類の繰り返し単位(アクリルアミド)になるようにモノマーを設計し,交互配列の制御されたポリアクリルアミドの合成に成功した(ニュースリリース)。
タンパク質は,アミノ酸という1種類の繰り返し主構造がたくさんつながった高分子であり,さまざまな側鎖構造を組み合わせ,側鎖の並びすなわち配列(シークエンス)を制御して機能を発現している。
近年,タンパク質のような高度な機能を有する高分子の開発を目指して,配列を制御した合成高分子の研究が注目を集めている。これまでに,研究グループは2種類のモノマーの側鎖をあらかじめつないでおき,その環化重合を行なった後に,つないでおいたスペーサーを切断(変換)することで交互共重合体を合成する手法を開発し,数種類の交互共重合体を合成してきた。
しかし,選択的な環化成長を制御するために基本構造の異なるモノマー種を組み合わせる必要があり,結果として主構造の異なるユニットの交互配列制御に限られていた。
この研究ではスペーサー切断によって同じ種類の繰り返し単位(アクリルアミド)に変換され,さらに選択的な環化成長が進行するようにジビニルモノマー1を設計し,配列の制御されたポリアクリルアミドの合成に成功した。
生成した環化ポリマーを単離せずに,重合後の溶液にアミン化合物を添加するだけで,アミノリシス反応による変換が可能であり(ワンポット合成),さまざまなアミン化合物を用いて10種類の交互共重合体の合成に成功した。
この手法はアミノの置換基Rによって交互共重合体の特性を変えることが容易であり,置換基によっては水や有機溶媒中で温度応答性を示すことが分かった。
また,仏パリ市立工業物理化学学校(ESPCI Paris)の研究グループとの共同研究によって,長鎖アルキル基を有するアミン(オクタデシルアミン)を反応させた交互共重合体は液晶性を示すことを明らかにした。この場合,1:1のランダム共重合体は液晶性を示さなかったことから,配列制御によって新たな特性が発現したと考えられるという。
重合後にアミン化合物を添加するだけで,アミン化合物由来の置換基を導入できるので,さまざまな交互共重合体を合成可能になる。今後は配列が特性や機能の根幹となる構造材料や生体材料の開発を検討するとしている。