東北大,HEAのナノポーラス化に成功

東北大学の研究グループは,チタン(Ti),バナジウム(V),モリブデン(Mo),ニオブ(Nb),タンタル(Ta)の5成分元素から成る体心立方格子系ハイエントロピー合金(HEA)のナノポーラス化に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

HEAは,従来の合金を凌ぐ優れた低・高温機械的特性を持つなど,その新規性が近年注目されている。また,ナノポーラス化は,金属に無数の開気孔(ポーラス)を導入することで比表面積を広げ,金属に新たな機能性をもたらす技術で,触媒や電極,ナノメカニクス材料などに使用されている。

体心立方格子系ナノポーラス・ハイエントロピー合金(BCC-np-HEA)の作製には,Mg90Ca10(原子数%)合金液体(液相線温度:524℃)を脱成分媒体として選択し,金属溶湯脱成分法の反応設計指針に従って,(Ti0.2V0.2Nb0.2Mo0.2Ta0.225Ni75(原子数%)を前駆合金とした。MgやCaに対して,Ti,V,Nb,Mo およびTaは合金化せず分離しやすい一方で,NiはMgやCa とは合金化しやすい性質を有する。

よって,この前駆合金を合金液体に浸漬すればNi元素が選択的に溶け出し,残存するTi,V,Nb,MoおよびTa成分が合金液体中でポーラス構造を自己組織化すると期待される。600~900℃の合金液体に10~120分間浸漬して脱成分処理を施した試料を,硝酸水溶液に浸漬してMg, Ca およびNi成分を取り除くことにより,TiVNbMoTa合金系のBCC-np-HEAが得られた。

その中でも最も低温・短時間である600℃,10分間の脱成分処理で得られたBCC-np-HEAは,約10nmの最も小さいリガメントサイズで,約7nmを中心とした超微細孔分布を有し,比表面積は55.7 m2/gとポーラス金属としては極めて大きな値であることが分かった。

これまで脱成分法によって様々なナノポーラス金属が作製されている。それらのリガメントサイズ(d)は,それが形成した脱成分反応時の原子の移動速度に依存する。その原子の移動速度は脱成分温度(T)に依存するが,そもそも,融点(T)の高い元素ほど原子移動は遅い性質を持つことから,この二つの因子を組み合わせた換算脱成分温度(Tm/Td)との関係によってリガメントサイズを記述することができる。

脱成分法によって作製された様々なナノポーラス金属のリガメントサイズと換算脱成分温度の関係は右肩下がりの同一直線上に位置するのに対して,今回異なる温度で得られたBCC-np-HEAでは,直線から逸脱した傾きを持ち,同等の脱成分温度で比較して約一桁程度小さく成長し難いことが分かった。

今回開発した合金は多くの弁金属元素を含有することから,これを利用した大容量電解コンデンサや,その高い形態安定性を利用した超長寿命触媒等への応用が期待されるとしている。

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