兵庫医科大の研究グループは,脱臼水晶体・眼内レンズに対する特殊な白内障の手術において,研究グループが考案,改変した眼内レンズ強膜内固定法が,従来のものより低侵襲であることを証明した(ニュースリリース)。
眼内レンズ(IOL)強膜内固定法は世界で広く使われている術式の一つで,水晶体嚢を支えるチン小体脆弱例における通常の白内障手術施行が困難な症例や,すでに挿入したIOLが眼内に落下している症例で,IOLを強膜に固定する。
この水晶体・IOLが脱臼する状態になりやすいのは偽落屑症候群という緑内障であることは分かっている。すなわち,この強膜内固定法を施行される眼においては,将来的に緑内障手術が必要になるかもしれないという。
緑内障手術をする上で,結膜が正常であることは非常に重要な手術成功の因子となる。よって,この研究においては,従来のIOL強膜内固定法を改変し,出来る限り結膜を温存することを念頭においた,低侵襲なIOL強膜内固定法を開発することを目的としたという。
対象は兵庫医科大学眼科において,脱臼水晶体・IOL,無水晶体眼を呈し,IOL強膜内固定法を行なった54例60眼。診療録から後向きにデータを抽出し,術前後の視力変化,惹起乱視,合併症の有無などを検討した。
術者は単独で研究グループの石川裕人講師が全例行なっている。2017年10月以前は従来のIOL強膜内固定(術創6カ所),以降は改変IOL強膜内固定(術創4カ所)を行なっており,この2群間での検討を行なった。
その結果,視力に関連する因子や,合併症に2群間に差はなく,改変IOL強膜内固定法は術創が少なくなりより低侵襲な手術ということが言えたという。
なお今後の課題として,この研究は後向きであり,術者毎の手術習熟度の問題があるという。また,今後角膜切開で脱臼水晶体・IOLの処理や新規IOLの挿入を行なえば更に結膜温存することが可能となるとしている。