原研ら,半導体メモリの電子状態変化を観測

日本原子力研究開発機構(原研),物質・材料研究機構,高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究グループは,次世代不揮発メモリの材料として期待されるアモルファスアルミ酸化膜において,半導体メモリのまったく新しい動作メカニズムを説明する電子状態変化を世界で初めて直接観測でとらえた(ニュースリリース)。

現在,世界で広く使用されているコンピューターの主記憶メモリであるDRAMは,揮発性のため電力消費が大きいという問題を抱えている。そこで,その問題を克服できる次世代不揮発メモリとして,遷移金属を用いた「ReRAM(抵抗変化型不揮発メモリ)」が盛んに研究されている。

しかし,一般的に,遷移金属酸化物では,メモリ動作時に遷移金属原子の価数が変わってしまう化学反応が起こる。その結果,副生成物が生じるために,ReRAMが劣化しやすく,書き
換え回数に限界があると言われている。

研究グループは,アモルファスアルミ酸化物の酸素空孔への電子の出入りがエネルギー的に安定して行なえるという理論的予想を踏まえ,アモルファスアルミ酸化膜を用いて新しい不揮発メモリ動作のメカニズムを解明するために放射光実験を行なった。

具体的には,酸素空孔モデルを検証するために,KEKの放射光実験施設(フォトンファクトリ-)において,アモルファスアルミ酸化物(AlOx)ReRAM の構成元素である酸素とアルミニウムの吸収スペクトル測定を行なった。

その結果,オン・オフのメモリ動作により,酸素サイトの電子状態が変化することを直接観測でとらえた。また,アルミニウムサイトの電子状態は変化せず,化学変化が生じていないことを明らかにした。これらの結果は世界初だという。

アモルファスアルミ酸化膜を用いたReRAMは,化学変化による劣化が起こらないので,既存のDRAMの消費電力問題の解決やDRAM並みの耐久性の向上が期待される。また,酸素空孔の電子の出入りの原理を応用した新規電子デバイス材料の開発が期待されるとしている。

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