東北大学,台湾 中央大学,国立天文台の研究グループは,アルマ望遠鏡を使ってはじめてガンマ線バーストの電波残光の偏光の測定に成功した(ニュースリリース)。
GRB171205Aと呼ばれるガンマ線バーストは,アメリカ航空宇宙局(NASA)のニール・ゲーレルス・スウィフト衛星によって 2017年 12月5日に硬X線で検出された。
遠方宇宙(典型的に~100億光年)で発生するガンマ線バーストには珍しく,5億光年と近傍で発生したことが,ヨーロッパ南天天文台・超大型望遠鏡の可視光観測によって確認された。また,可視光の観測から星の進化の最後におきる超新星爆発が起こっていたことも捉えられている。
研究グループは,米ハーバードスミソニアンセンターと台湾・中央研究院が運用するサブミリ波干渉計(SMA)を用いることで,爆発の1.5日後にガンマ線バーストの観測史上で最も明るいサブミリ波残光の検出に成功した。
光の“振動方向の偏り”である偏光を測定するには,高感度のアルマ望遠鏡でも明るい天体が望まれるので,GRB171205Aは,まさに最適なガンマ線バーストだった。すばやくサブミリ波干渉計の観測結果を確認することで,アルマ望遠鏡の観測を爆発から5日後に実施し,はじめて微弱な偏光の検出に成功した。
これまでの理論モデルでは,すべての電子が高エネルギーになっていることを想定していたが,予想よりも微弱な偏光の検出によって,約10%の電子しか高エネルギーになっていないことが示唆された。この結果は,ガンマ線バーストの爆発の総エネルギーを従来の推定より約10倍も大きくすることになるという。
今回の観測は,ガンマ線で輝く時間の長いロング・ガンマ線バーストの種類のなかでも低エネルギーの部類のイベントで測定が行なわれているので,典型的なエネルギー量のイベントや重力波と同期したショート・ガンマ線バーストにも同様の偏光測定を行なうと,多彩な振る舞いを示すガンマ線バーストの理解が飛躍的に進むことが期待されるとしている。