東工大,ペロブスカイト太陽電池の特性向上

東京工業大学の研究グループは,酸処理で官能基を修飾した多層カーボンナノチューブを紙状電極(BP)とし,ホール輸送層(HTM)/Au電極の代わりに用いたペロブスカイト太陽電池において,初期特性が安定しなくても常温常圧で放置するだけで電圧-電流特性が徐々に向上し,その構造が本来持つ最大効率に収束することを世界で初めて見出した(ニュースリリース)。

従来のHTM/Au電極に代わり,安定性向上とコスト低減への期待から,炭素材料を使用するHTMフリーのペロブスカイト太陽電池が近年注目されている。しかし,報告されている発電効率はHTM/Au電極を使用した場合よりも低く,ペロブスカイト層で光励起されたホールを速やかに引き出し,界面での電荷移動抵抗を下げることが課題となっている。

同時に劣化の原因となる水分のペロブスカイト層への侵入を防ぐことが重要で,電極/ペロブスカイト層の界面をできる限り強固にすることが双方の向上につながると考えられる。

今回研究グループは,簡便な作製プロセスである二段階湿式法を用い,HTMフリーペロブスカイト太陽電池を作製した。ぺロブスカイト材料はシンプルな組成を有するCH3NH3PbI3(ハロゲン化鉛ペロブスカイト)とし,電子はTiO2電極,ホールはHTM/Au電極の代わりにカーボンナノチューブ(CNT)紙状電極(buckypaper:BP)で集電した。

研究グループは,CNTに導入した-COOH,-OHなどの酸素官能基が時間の経過とともにPbI2膜やMAPbI3膜と強い相互作用を有することを見出し,乾燥剤入りの試料ケースに保管して常温常圧で一定時間放置するだけで,その構造が本来持つ電流−電圧特性にまで次第に向上し収束することを発見した。

具体的には,発電効率の初期値3%のペロブスカイト太陽電池を常温常圧で77日間放置すると発電効率が11%に向上した。

測定から,電池を暗所に放置するとMAPbI3/CNT界面抵抗のみならず,MAPbI3/TiO2界面の電子移動抵抗も大きく下がることがわかった。

これらの結果は作製プロセスの精度が多少悪くても,酸素官能基が存在することで,ペロブスカイト結晶の接合界面が強固に安定化することを示す。強固な接合界面を多く作ることができれば,発電特性が向上し,劣化耐性と安定性が高い太陽電池になる。

研究グループは今回,ペロブスカイト太陽電池の高効率・高耐久・低コスト化は電極との強固な接合界面形成が鍵で炭素材料がその役目を果たすことを示した。ペロブスカイト層の組成,膜厚の最適化で,これまでの発電効率を塗り替える可能性もあるとしている。

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