大阪府立大学,電力中央研究所(電中研),中国電力,北海道電力,沖電気工業,非破壊検査は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」の研究開発項目の1つである「従来法での計測不能領域を革新的手法により計測可能にする産業プロセス用センサー」の開発を実施する(ニュースリリース)。
わが国で技術開発が進められている次世代火力発電プラントは,再生可能エネルギーの出力変動を調整する役割が期待されているが,起動停止時や負荷変動時に生じる異常過熱によって伝熱管クリープ破断やエネルギーロスが生じやすくなるため,異常過熱箇所をリアルタイムで特定することが望まれている。
また,化学プラントのような高温反応装置では,不均一な化学反応によるホットスポットの検出や,ノズル溶接部に発生するき裂の監視が望まれている。しかし既存の高温用センサーは,計測精度,空間分解能,耐久性が低く,一般的なクリープ解析手法は計算に長時間を要することから,超高温で稼動する産業設備の温度分布,ひずみ分布,き裂のオンライン監視とクリープ解析にもとづくリアルタイムでの余寿命評価は不可能だった。
今回開始するプロジェクトでは,750度以上の高温下での安定的な計測を実現する光ファイバコーティング技術と,この光ファイバを使った温度・ひずみ・AEセンサー,10cmの分解能でリアルタイムでの温度分布計測を実現する光ファイバセンサー用信号処理技術,理想化陽解法FEMにより従来比100倍以上の高速化を実現することで実構造のクリープ解析を可能にする技術の開発を目指す。
さらに将来的には,今回開発する各要素技術を組み合わせて超高温下で動作する設備・機器をデジタルで完全に再現するデジタルツイン化を実現していく。これにより,リアルタイムの状況把握が可能になり,装置の余寿命管理や装置動作への高精度なフィードバックによる省エネルギー化,ならびに熟練の技術者の暗黙知の伝承に繋げていくという。
具体的には,2019年7月から2か年の計画で,以下の研究実施項目を推進していく。
実施項目A:光ファイバーセンサーの空間分解能向上のための信号処理技術の開発
実施項目B:光ファイバーを750℃で長期間使用可能とするためのコーティング技術の開発
実施項目C:750℃で長期間使用可能で計測精度の高い光ファイバーセンサーの開発
実施項目D:大規模クリープ解析技術およびそれを用いたデジタルツイン技術の開発
実施項目E:オンライン監視システムの構築および実証
6者は,将来的にデジタル空間でプラント状態を再現することで,溶接部分にかかる応力分布といった重要な情報に容易に仮想空間上でアクセスすることが可能になるとしている。