東大ら,LPGで蛍光が増す分子センサーを開発

東京大学と学習院大学の研究グループは,液化石油ガス(LPG)を選択的に取り込み,これに伴って蛍光強度が増大する分子センサーを開発した(ニュースリリース)。

分子を取り込むことのできる分子(分子ホスト)による標的分子の認識は,標的分子の持つ官能基や電荷,分子の形状に基づくため,官能基を持たない炭化水素の中からある特定の分子のみを認識することは容易ではない。

官能基を持たない標的分子に対する選択性を高める戦略として,標的分子全体を包み込み,標的分子の形状を正確に認識する方法があるが,このようなホスト分子は,入口や出口が塞がれているために,標的分子の取り込み・放出が遅くなる。このため,選択性と応答速度を共に向上させる分子センサーの開発が求められている。

研究グループは,液化石油ガス(LPG)を選択的に取り込み,これに伴って蛍光強度が増大する分子センサーを開発した。

この分子センサーは歯車状両親媒性分子が水中で自己集合した箱状の超分子カプセル(ナノキューブ)で,集合化した状態で305nmの紫外光を照射すると,歯車状両親媒性分子から450nm付近に蛍光を発するが,LPGを内包すると,蛍光強度が3.9倍増加することを見出した。

ナノキューブはLPG以外の気体を取り込まないためにLPGに対して高い選択性を示す。また,LPG濃度0.1から100体積%の範囲で,ナノキューブの蛍光強度がLPGの濃度の対数に対して直線的に変化するために,LPGの爆発下限界より低濃度である0.1体積%まで定量ができる。

通常,箱状の分子ホストは内部空間が隔離されているため,標的分子の取り込み・放出に時間がかかるが,ナノキューブでは歯車状両親媒性分子が容易に隙間を作り,標的分子の内外の輸送を容易にするため,LPGの濃度変化に対して素早く応答することができるという。

研究グループは,今後,分子を噛み合わせて作るカプセル状の集合体が,高感度・高選択性・高応答性を兼ね備えた分子センサーの設計指針となると期待できるとしている。

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