沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究グループは,マイクロ構造やナノ構造の作製時に使用可能な,ガラスと合成ダイヤモンドを合わせた新たな基材を作製した(ニュースリリース)。
現在,人間の髪の毛の幅よりも小さい装置が,薬物送達,半導体,燃料生産技術などのカギとなりつつある。しかし,マイクロデバイスやナノデバイスの作製のため実施されている現行のプロセスは,費用がかかる上,非効率となる。
一方,天然ダイヤモンドと同じ化学構造を持つ合成ダイヤモンドは,弾力性があり,低コストで持続可能な材料。このダイヤモンドと,用途が広く,電気を通さないガラスを組み合わせる技術は将来有望といえる。
そこで研究グループは,持続可能な材料であるダイヤモンドやガラスなどを利用することで,環境への悪影響を最小限に抑えようとした。
今回の研究ではまず,ガラスエッチングによって基材を作製した。酸を利用してガラス板を50μm(人体における細胞の一般的な長さ)の幅にまで削り,さらにレーザーを使用し,ガラスの片面に直径および深さ約40μmの穿孔(キャビティ)を開けた。
次にガラスの反対側の面に175nmの厚さのナノ結晶ダイヤモンドフィルムを成長させ,キャビティの先端がダイヤモンドで密封された小さなチャネルに加工した。ダイヤモンドとガラスの組み合わせによって,生きている細胞をチャネルの中で成長させて観察できる透明な構造物を作ることができた。
この作製プロセスでは,ガラスの表面が粗くなったり不透明になったりするなど,たくさんの細かな不具合が生じたため,プロセスを最適化する多くの調整を行なったという。
この新たな基材は安価に作製でき,作製途中に生じる廃棄物を最小限に抑えることができるという。研究グループは今後,この基材の特許を申請し,商業的可能性を模索するとしている。