豊橋技術科学大学は,ファインセラミックスセンターと茨城工業高等専門学校,ポルトガル国際イベリアナノテクノロジー研究所,中国長安大学,独エアランゲン-ニュルンベルグ大学との共同研究により,高度なマルチフェロイック特性を示すナノ複合膜を,安価で簡便に作製できる液相プロセスを開発した(ニュースリリース)。
電気的な特性(強誘電性)と磁気的な特性(強磁性)を持ち,かつそれらの特性間に強い相関を持つ(電気磁気効果を示す)マルチフェロイック材料は,より多機能で高性能な次世代電気・磁気デバイスの実現に向けて開発が期待されている。
高度なマルチフェロイック特性を示す材料を作製するには,強誘電体と強磁性体をナノメートルスケールで適切にかつ周期的に複合化する必要がある。従来は,気相法によって自己組織的にナノピラーアレイ構造などを作製し,その材料において大きな電気磁気効果が観測されていた。しかし,気相法では大型で高価な設備の使用が必須で,また試料の大面積化が現実的に不可能だった。
そこで研究グループは,比較的安価で簡便ないくつかの液相法を組み合わせることで,高度なマルチフェロイック特性を示す,ナノピラーアレイライクな材料を作製するプロセスを開発した。
このプロセスで得られるマルチフェロイック複合膜では,強誘電体と強磁性体の界面において,局所的にエピタキシャルな関係を有していることが明らかとなり,それによって大きな電気磁気効果を発現することがわかった。
従来の気相プロセスに比べて非常に安価にマルチフェロイック複合膜を作製することができ,かつ大面積化にも対応可能だという。
研究グループは,このマルチフェロイック材料は,電気的特性と磁気的特性の間に強い相関をもつため,将来的に低消費電力・大容量のメモリデバイスや空間光変調器,さまざまなセンサー等への応用が期待できるとしている。