筑波大学,岡山大学,九州大学らの研究グループは,酸化グラフェンに光を照射することにより酸素が除去されるメカニズムを解明することに成功した(ニュースリリース)。
次世代材料として期待されている酸化グラフェンは,そのままでは電気を流さないため,電子デバイスなどに応用する際には酸素を適切に除去する必要がある。除去には,光の照射や加熱が用いられるが,そのメカニズムは十分に解明されず,望みの機能を持った炭素二次元シートを作製する方法は定まっていなかった。
また,加熱による酸素除去では,一酸化炭素や二酸化炭素の形で酸素が除去されるような複雑な化学反応が進行し,特定の酸素原子のみを除去することはできなかった。
そこで研究グループは,光照射直後の酸化グラフェンの電子状態,分子振動状態,分子構造をそれぞれ1兆分の1秒の時間分解能を持つ超高速過渡吸収分光法,超高速時間分解赤外振動分光法,および超高速時間分解電子線回折法を用いて観測した。
その結果,光照射により,酸化グラフェン上のエポキシ基に属する酸素原子が選択的に40psの時間をかけて脱離していることを明らかにした。さらに,この選択的な酸素原子脱離の詳細なメカニズムを,時間依存密度汎関数法という理論計算を用いて明らかにした。
その結果,光の照射で酸化グラフェンが励起状態となった時に,酸化グラフェンの平面構造とエポキシ基に属する酸素原子との結合が不安定になり,酸素原子が脱離することがわかった。
研究グループは今回の研究が,グラフェンや新しい機能を持った炭素二次元ナノシート材料の大量合成に有力な指針を与えることとなり,研究が進むことでグラフェンの大量合成だけでなく,センサーや蓄電池などのデバイス応用からドラッグデリバリーなどのバイオ応用まで幅広く役立つ,新しい機能を持った炭素二次元シートの合成につながるとしている。