浜松ホトニクスは,水銀(Hg)とカドミウム(Cd)を含まず,波長14.3μmの中赤外光まで検出できる化合物光半導体素子(TypeⅡ超格子赤外線検出素子)「P15409-901」の量産化に成功した(ニュースリリース)。価格は320,000円(税抜き)。
現在,フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)をはじめとする分析機器には,制限物質であるHgとCdを含むテルル化カドミウム水銀(MCT)検出素子が組み込まれ,代替できる高品質な受光素子が求められていた。また,分析対象物に含まれる物質を正確に特定するためには,14μm付近までの中赤外光を測定し,吸収する性質の違いを比べる必要がある。
この製品は,インジウム(In)とヒ素(As)の化合物であるInAsと,ガリウム(Ga)とアンチモン(Sb)の化合物であるGaSbを,それぞれ数nmの厚さの薄膜で基板上に交互に2,000層以上積み重ねる特殊な構造を採用した化合物光半導体素子。
同社はこれまで,In,As,Sbを材料とし,11μmまで検出できる化合物光半導体素子を開発,販売してきた。これまで,11µmより長い波長の中赤外光は,高い製造技術が求められるため量産化が難しかった。
今回,同社は,製造装置を精密に制御するとともに製造条件を最適化した。これにより,均一な厚さのInAsとGaSbの薄膜を交互に繰り返し精度良く積層する製造技術を確立し,世界で初めてRoHS指令の制限物質である水銀とカドミウムを含まず,14.3μmまで検出できるTypeⅡ超格子赤外線検出素子の量産化に成功したという。
同社はこの製品により,現在,FT-IRをはじめ,中赤外光を利用し,大気や食品,薬剤などに含まれる物質を特定する分析機器に組み込まれている,制限物質を含む既存の受光素子からの置き換えが進むと見込む。また,ガスの成分分析機器や,物体の表面温度を非接触で高感度,高速に計測する装置などに組み込まれている既存の受光素子からの置き換えも期待できるとしている。