富士通研究所は,従来の生体認証システムと同等の認証精度・処理速度で,生体情報を暗号化したまま認証できる技術を開発した(ニュースリリース)。
近年,生体を使った認証の普及が進んでいる。しかし従来の技術では,複雑な生体画像の特徴量を単純なコードに変換することによる照合精度の劣化と,コードが膨大になることで照合処理に時間がかかるという問題があった。
生体認証では,あらかじめ登録している生体情報の特徴量(画像の中で登録・照合のために利用するデータ)と,認証時に入力された生体情報の特徴量との類似度に基づいて照合を行なう。今回,照合結果への影響度に応じて,コード化する領域の大きさを動的に調整することで,コード化に伴う特徴量の類似度の変化を抑え,照合精度を劣化させないコード生成技術を開発した。
また,従来のコード化技術では,生体の画像データ全体からコードを生成していたため,照合処理に時間がかかっていたが,生体の画像データの中で,照合精度への影響が大きい領域を自動的に選択してコード化する技術を開発した。これにより,コードの増大を抑制し,コード化をしない生体認証技術と同等レベルの高速認証を実現する。
今回,手のひら静脈のデータ10,000人分を使用して開発技術の認証精度を検証したところ,コード化しない方式と比較して,ほぼ同等の照合精度と処理時間となることを確認できた。
同社が以前開発した,1つの生体情報から複数の特徴コード(手のひら静脈画像の特徴部分を2,048bitの0と1で表現する技術)を生成できる技術を加えることで,生体認証サービスごとに異なる特徴コードを活用することや,万が一のデータ漏えい対策にも有効となるという。
同社はこの技術により,生体情報を常に暗号化したまま,より高精度・高速に認証可能となるため,今後,生体認証システムを活用したクラウド環境などにおける手ぶらでの決済の実現が期待できるとしている。なお,この技術は2019年度中の実用化を目指している。