東レは,車載用ディスプレーに求められる高視認性を向上させ,画面の大型化や曲面化が可能な感光性導電材料「RAYBRID®」を実用化し,本格的な量産と販売を開始した(ニュースリリース)。
従来の車載ディスプレーはITO電極(タッチパネル等の電極に酸化インジウムスズを用いたもの)を用いており,画面を大型化すると接触部の電気的変化を感知しにくく,反応遅れや誤操作に繋がる恐れがあった。
開発した感光性導電材料は,銀粒子を分散させたタイプで,特殊な装置を必要としない簡便な工程で2~4μmの細い配線を形成できる。ITO電極に比べて低抵抗であるため,メタルメッシュ電極(タッチパネルの表示部に銀などの金属を細い格子状に張り巡らせた電極)に用いることで,肉眼では電極が見えず,視認性が高い大型ディスプレーを作ることができる。さらに,メタルメッシュ電極に用いた場合,従来品よりセンサー感度が30%向上するという。
また,メタルメッシュ電極形成時に引き回し配線を一括形成することが可能なため,プロセスを簡便化することができる。高い視認性と車載用に求められる材料としての高い信頼性が評価され,一部のパネルメーカーはこの材料を導入したパネルの量産を開始しているという。
さらに,この材料は屈曲性に優れており,同社が開発した透明ポリイミドをフィルム基板として組み合わることで,薄くかつ軽いフレキシブルタッチセンサーに応用することができ,曲面ディスプレーへの適用が可能だという。
車載用の曲面ディスプレーは,自動運転技術が本格化した時代の車内空間の快適性の向上やより高級感のあるインストルメントパネルの装着など,デザインの自由度を拡げるため,今後,市場が拡大すると考えられており,同社ではさらなる拡販を図っていくとしている。