大阪大学は,太陽光照射下,水と酸素(O2)を原料とする非常に高いH2O2合成活性を示す新規光触媒として,レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)光触媒樹脂を開発した(ニュースリリース)。
過酸化水素(H2O2)は燃料電池発電の燃料となるエネルギーキャリアとしても有望視されているが,水素ガス(H2)を原料とするエネルギー多消費型のプロセスにより合成されており,地球上に豊富に存在する原料から再生可能エネルギーを用いて合成する方法が期待されていた。
今回,絶縁体であるためこれまで半導体光触媒には用いられてこなかった,塗料や接着剤として用いられる汎用のRF樹脂を,独自の高温水熱法により合成することにより,太陽光エネルギーを用いて水と酸素(O2)からH2O2を最大効率で生成するRF光触媒樹脂の開発に成功し,RF樹脂が半導体光触媒として働くことを初めて見いだした。
開発した触媒は,600nmを超える長波長の光を吸収し,太陽エネルギー変換効率で0.5%以上という,一般植物による天然光合成(~0.1%)を大幅に上回る非常に高い効率でH2O2を合成することができる。
光触媒による太陽エネルギー変換では,水分解による水素製造(H2O→H2+1/2O2)などが古くから研究されているが,この0.5%という変換効率は,これまでに報告された粉末光触媒による太陽エネルギー変換反応としては最大の効率という。
さらに,研究グループはRF樹脂の光触媒活性が高温水熱合成により飛躍的に向上する原因を明らかにした。高温水熱法では,レゾルシノールのベンゼノイド体(電子ドナー)とキノイド体(電子アクセプター)が連結したドナーアクセプター(DA)対が形成され,これらが積み重なることにより半導体バンド構造を形成する。
光触媒樹脂の価電子帯および伝導帯バンド準位は,それぞれ,水の酸化(2H2O→O2+4H++4e–)と,O2の還元(O2+2H+2e–→H2O2)に適切な準位であるほか,有機高分子であるため,生成したH2O2の分解には低活性。これらの特徴により,非常に高いH2O2合成活性が実現されることが明らかになった。
研究グループは,開発した光触媒樹脂は1µm程度の球状粒子で取り扱いも容易なため,さまざまな加工により社会実装が期待でき,また,今回の光触媒設計を応用することで,さらに高活性なH2O2合成触媒が創製できるとしている。