浜松ホトニクスは,インジウム(In),ガリウム(Ga),ヒ素(As)を材料とするエリアイメージセンサーとしては世界最長となる波長2.55μmの近赤外光まで検出できる撮像素子「G14674-0808W」を新たに開発した(ニュースリリース)。価格は220万円。
現在,プラスチックのリサイクル用途向けのハイパースペクトルカメラでは,1.7µmの近赤外光まで検出できるInGaAsエリアイメージセンサーが主に使われているが,難燃性樹脂が含まれているプラスチックと一般的なプラスチックの選別が困難だった。そのため,難燃性樹脂が吸収する2.5µm付近の近赤外光まで検出できるエリアイメージセンサーが求められていた。
今回,同社が都田製作所第3棟(昨年から稼働を開始)に新規に導入した設備を利用し,InAsとGaAsの組成比を最適化するとともに受光部の製造工程を見直した結果,課題となっていた製造工程での欠陥発生を減らすことに成功し,世界最長となる2.55µmの近赤外光まで検出できるInGaAsエリアイメージセンサーを実現したという。
また,この製品に最適化した回路を自社で設計,製造することにより,受光部に生じる暗電流を低減するとともに信号を読み出す速度を高めた。この製品をハイパースペクトルカメラに組み込むことで,家電製品で広く使われている難燃性樹脂が含まれるプラスチックと一般的なプラスチックを鮮明な画像で高速に選別可能となる。
選別したプラスチックから純度の高い再生利用可能な素材を作ることで,プラスチックのリサイクル率を高めることができ,最終廃棄物として埋め立てられるプラスチックの減少につながる。また,ハイパースペクトルカメラはコンクリート構造物の劣化診断や錠剤の識別などへの応用も期待できるという。
主な仕様は次の通り。画素数:320×256ch,画素ピッチ:20µm,冷却2段電子冷却(Tchip=-20度),感度波長範囲:1.7~2.55 µm,暗電流:30pA,フレームレート:500fps。部分読み出し:可能。
なお,この製品は,7月1日から国内外の産業用カメラメーカーに向け受注を開始。今回,幅広い用途に向け,検出できる波長範囲が異なるInGaAsエリアイメージセンサーも同時に受注を開始する。また,この製品の性能を簡単に評価できる検出ヘッドの受注を10月から開始する予定としている。