JFEスチール,真空レーザー溶接をクラッド鉄鋼に適用

JFEスチールは,定格出力30kWの大出力レーザーによる真空中でのレーザー溶接技術を開発し,クラッド鋼板の生産性向上を目的として,西日本製鉄所(福山地区)厚板工場のクラッド鋼板製造工程に導入した(ニュースリリース)。

クラッド鋼板は,炭素鋼または低合金鋼(母材)の表面にステンレス鋼など(合せ材)を接合した複合鋼板で,ケミカルタンカー,圧力容器やラインパイプなどに広く用いられている。

合せ材と母材との間が良好に接合されたクラッド鋼板を得るには,クラッドスラブ組立て溶接において重ね合わせ面全周に安定して深い溶込みを有する溶接部を形成することが重要。しかし,大出力レーザーを真空中で長時間照射し続けることから,集光レンズに局所的な温度変化が生じてビームの品質が変化し,良好な溶接部が得られなくなるという問題があった。

そこで同社では,真空中での大出力レーザー照射用に集光レンズなどの光学系部品の設計の最適化を図り,それらの光学系部品の形状精度や使用中の温度を適切に監視,制御することによりビーム品質の変化を小さくする技術を確立した。

また,レーザービームの形状およびレーザー出力,溶接速度などの溶接条件を適切に調整することにより,溶込み形状を制御する技術を構築し,最適な形状が安定して得られる大出力真空レーザー溶接条件を確立した。

この技術をクラッドスラブ組立て溶接に適用することにより,重ね合わせ面全周にわたり,大出力真空レーザーの特長を活かした高品質で安定した溶接を実現したという。昨年度に実際の生産プロセスに導入し,既に18,000トン以上のクラッド鋼板の製造に適用し,操業を継続している。30kW級の大出力レーザーを用いた真空レーザー溶接の鉄鋼生産ラインへの適用は世界初という。

同社は,組立ての能率および品質が向上したことに加え,今後,これまで組立て,製造が困難とされていたさまざまな合せ材を組み合せたクラッド新商品の開発に貢献することができるとし,さらにクラッド鋼板のみならず,他の生産プロセスへの展開も検討するとしている。

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