大阪市立大学,理化学研究所らの研究グループは,極低温の超流動ヘリウムの表面に浮かせた微粒子の中で不可解な動きをする一群の粒子運動は,量子渦の動きに起因していることを明らかにした(ニュースリリース)。
これまで気体や液体のさまざまな「流れ」を理解するために理学や工学など多くの分野で膨大な研究が行なわれてきたが,まだ十分な解明はされていない。流れを探索するためによく用いられるのが,ミクロンサイズの微粒子を混入し,その運動を観察する手法。
今回,研究グループは,液体の超流動ヘリウム中に漬けた金属をレーザー光で破壊し,多数の微粒子を作って流体中に拡散させ,それらを電場により液面に捕集する技術を確立した。捕集された微粒子の液面上の運動を観測したところ,他の微粒子と異なる奇妙な運動を行なう一群の粒子の存在を確認した。
絶対温度約2度(摂氏マイナス271度)の液体ヘリウムは,量子力学的効果が強く効く量子液体(または量子流体)と呼ばれ,極低温になることで液体の粘性がゼロとなる「超流動」状態となる。その大きな特徴として,量子渦という渦が存在することが知られている。
研究グループはこれら粒子の奇妙な運動が,超流動ヘリウム特有の量子渦に起因するのではないかと考え,その運動の理論および数値計算を行なったところ,目視できない量子渦が微粒子を捕獲し,動きを操っていたことが明らかとなったという。
研究グループは今回の研究が,「微粒子」と「渦」という一見別のものが結合して動くという描像を初めて示し,乱流を含む,さまざまな流れの研究に重要な知見を与えるとともに,微粒子と渦を通じて流れを制御する道を拓くものでもあるとしている。