京都工芸繊維大学は,3次元画像技術であるホログラフィーを基に,超短パルス光が伝播する様子とその光の振動方向である偏光情報を同時に動画像記録・観察できる超高速イメージング技術の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
極めて短い時間だけ光を照射できる超短パルスレーザーにおいて,光パルスが伝播する様子を画像,とりわけ動画像によるスローモーション観察する技術は,高性能光ファイバーによる光通信の大容量高速化,パルスレーザーの性質を利用した加工技術の高精度微細化,レーザーによるがん治療の高速・高性能化などさまざまなレーザー利用技術の基盤となる。
しかし,光は真空中を秒速約30万m/sで伝播するため,光が伝播している様子は速すぎて直接見ることができず,世界最高速級の高速度カメラでも撮影が不可能だった。 また,こうした技術は光の明るさしか取得できなかった。
研究グループが今回提案した技術は,超短光パルスの伝播の様子のスローモーション動画像記録と偏光情報の取得を可能にするというもの。その特徴は,ホログラフィーにおける干渉の性質を利用した点。ホログラフィーにおいて,記録対象の情報を持った物体光と参照光とで偏光方向が同じ場合には再生像が明るくなる。
一方,物体光と参照光の偏光方向が直交している場合には再生される像は暗くなる。ホログラムを空間的に区切り,この干渉の性質を全区画で同時に記録することで,一度の記録で伝播する光を構成する複数の偏光の成分を観察できる。
今回の研究では,超短光パルスが伝播する様子と偏光状態を同時にスローモーション動画として記録することを実現するため,ホログラフィーにおける参照光を空間的に広げたのち,複数枚の偏光フィルムで作製した偏光フィルタ群を通過させることで複数の偏光状態が同時に記録される複数の干渉縞画像を形成し,この干渉縞画像を高分解能の写真乾板で記録した。
原理確認実験で,偏光に任意の空間分布を持たせるような物体中を伝播する超短光パルス,および偏光によって光の伝播方向が異なる性質である複屈折性をもつ方解石中を伝播する超短光パルスの伝播の様子をスローモーション観察できたという。
研究グループは,今回の研究により,超高速で伝播する光の偏光の変化を捉えることで,光化学反応メカニズムの解明や,高分子材料・メタマテリアルなどの新規材料による偏光制御の高機能化など偏光利用技術の進展が期待できるとしている。