ジェイテックコーポレーションと大阪大学の研究グループは,真空環境下で動作可能な高精度形状可変ミラーの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
これまでの高精度形状可変ミラーは,圧電素子とミラー基板とを樹脂成分からなる接着剤で接合していたために,真空チャンバー内での有機ガスの発生や,チャンバークリーニング時の加熱工程による接着部の劣化の問題があった。
この結果,高精度形状可変ミラーの利用は大気圧下に限定されており,真空が必要なX線実験や,真空中でしか利用できない軟X線には適用できなかった。
今回研究グループは,有機物が含まれていない無機材料を用いることで圧電素子とミラーとを接合する技術の開発に成功した。
ミラーの性能を評価した結果,従来と同等の駆動性能を示しつつ,有機ガスの放出レートも真空チャンバーを汚染しないレベルに抑えられ,クリーニングに必要な加熱温度である200℃の処理工程前後でも形状変化量がほぼ同一であることを確認した。これらの結果から,真空下での形状可変ミラーの利用において,実用上全く問題ないことを実証した。
この研究成果により,各国で建設中また,計画中の第4世代放射光施設において,開発した形状可変ミラーを用いた,より高度なX線利用が期待されるという。例えば,波面制御技術を応用し高強度なX線ビームをさらに10nm以下に集光することができれば,極微小試料の高感度分析に威力を発揮する。
集光径制御のために活用すれば,解析対象や解析手法に応じて様々な大きさのX線ビームをユーザーに供給することができる。1つの試料を最適化されたX線分析手法を用いて,様々な視点から迅速に解析することが可能となり,新しい発見が期待されるとする。
形状可変ミラーの用途は多岐に渡り,宇宙望遠鏡や,高輝度レーザーなどの制御用途に用いられることも提案されている。今後様々な形状可変ミラーの登場が予想されるが,今回の研究で開発された技術はそれらにも応用可能であり、高精度形状可変ミラーのますますの活用が期待されるとしている。