京大,重い星の終末期の外層放出機構を解明

京都大学の研究グループは、太陽の質量の10倍を超えるような重い星が超新星爆発に至る最終段階で水素外層およびヘリウム層を失う機構を特定した(ニュースリリース)。

太陽の10倍以上の質量をもつ重い星(大質量星)はその生涯の最後に超新星爆発を起こす。重い星は中心から酸素コア,ヘリウム層,水素外層という特徴的な構造を作り,多くの星で水素やヘリウムからなる外層部は宇宙空間に放出されることが知られているが,その外層放出を引き起こす原因はわかっていなかった。

超新星は観測データに見られる特徴的なふるまいにより型分類(タイプ分類)される。代表的な方法として,爆発後数週間程度の明るい時期にとられた可視スペクトルによる型分類が広く使われている。スペクトルの中には元素ごとに特徴的な波長の光の情報が含まれるため,どのような元素が爆発した星の表面に豊富に存在したかがわかる。

研究グループは,過去に世界中の最大級望遠鏡で取得された超新星の観測データにこの手法を適用した。その結果,これまでの手法に基づく解析では見られなかった性質が二点発見された。

一つ目は,「外層に含まれるヘリウム層の量」と「生まれた時の質量」に対応する観測量(ナトリウム輝線と酸素輝線)を比較すると,非常にきれいな一対一関係があること。これは,爆発直前に残されていたヘリウム層の量は生まれた時の質量だけで決まる,ということを意味する。

二つ目は,その関係の上で,IIb型超新星(水素外層が残っている星の爆発)とIb型超新星(水素外層をすべて失ったヘリウム星)は同じ分布をしていること,一方でIc型超新星 (水素外層・ヘリウム層ともに失った星)は全く分布が異なり,より重い質量に集中すること。

IIb型とIb型では,ヘリウム層の量に違いがみられないことも判明し,この二つの型の超新星は生まれた時点での星の質量も同程度,かつともにヘリウム層は全く失われていないことがわかった。よって,この二つの型の超新星の主な違いは,水素外層の有無だけとなる。つまり,水素外層を放出する過程は質量に依存しないことになる。このことから,大質量星最期の進化を特徴づける外層放出過程に新しい描像が導かれた。

この研究により,観測されている様々なタイプの超新星の観測的性質を統一的に理解することが可能になり,これまで謎とされていた重い星の終末進化の解明に向けた一歩となることが期待されるとしている。

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