群馬大学は,飴でできた食べられる再帰性反射材を開発した(ニュースリリース)。
再帰性反射材は,道路の標識や自転車の反射材として利用されている光学素子で,画像処理用のマーカー(目印)としてもよく用いられている。食べられる素材からのみで形成することで,料理の上や消化管内壁に載せても無害なマーカーが実現できる。
従来材料として利用してきた寒天は,その主成分が水分であるため,一度空気中に出してしまうと乾燥により比較的短時間で機能を失ってしまうという欠点があった。また,寒天はゼリー状で柔らかく,複数を組み合わせて構造を作ることが難しいため,例えば複数の寒天製再帰性反射材を異なる方向に配置して再帰反射可能な方向を広げるといった高機能化が難しい素材だった。
そこで研究グループは,保存が容易で硬い素材として飴から再帰性反射材を成形する手法を開発した。飴は,(1)溶ける温度が170度前後と比較的高い,(2)粘度が高い,(3)加熱しすぎるとキャラメル化して色がついてしまう,という性質がある。
そのため再帰性反射材に必要な,透明性を保ちながら微細な形状を高精度に形成することが難しい素材だが,今回,還元イソマルツロースという糖と水を原料にシリコンを型とした製法で微細な形状を透明かつ高精度に形成することに成功した。
応用例として,テーマパークのカフェテリアでの利用を想定した料理への動的なプロジェクションマッピングや,市販の光学式モーションキャプチャシステム用のマーカーとしての利用を提案している。後者は,動物のモーションキャプチャなどで,誤って動物が食べても無害なマーカーとして利用できることを意味するとしている。