大日本印刷株式会社(DNP)は,2月6日~10日にフランス・パリで行なわれる「ジャポニスム2018」公式プログラム「能・狂言 公演」で,スマートグラスによる観劇用AR(Augmented Reality:拡張現実)ガイドシステムを提供する(ニュースリリース)。
「ジャポニスム2018」は,“世界にまだ知られていない日本文化の魅力”を紹介する複合型文化芸術イベント。今回同社が提供する観劇用ARガイドシステムは,舞台公演の進行に合わせて,スマートグラスのウェアラブルデバイスに字幕解説を表示するもの。
能楽や狂言,歌舞伎など日本の伝統芸能の海外公演では,大型スクリーンや舞台上部や横の壁面などに字幕解説を表示する。この場合,観客は字幕を見るために舞台から目を離さざるをえない。字幕を必要としない人には不要な情報であるため,観劇を阻害する要因となることや,多言語に対応するには,広い投影スペースが必要となるなどの課題があった。
これに対し今回の観劇用ARガイドシステムは,実際に見ているシーンに情報を重ねて表示する。複数言語や,初心者,中級者向けなど利用者に合わせた情報を選択でき,今回の公演では能楽師の演技に加え,字幕解説を日本語とフランス語で表示できるため,これまでの能楽の海外公演にはない分かりやすさを実現する。スマートグラスに表示する解説画面は簡単に編集・制作できる機能を備えており,特別な知識や技能がなくても,コンテンツ制作が可能だという。
また,表示するコンテンツのタイミングを指示する信号は,人の耳で聞き取れない音響透かし技術を活用して会場の既設スピーカーから配信するため,Wi-Fiなどの通信環境を新たに設置することなく,システムを導入することができる。
この観劇用ARガイドシステムは,能楽などの古典芸能以外にもオペラやバレエなど舞台芸術などの分野での利用や,聴覚に障がいのある方も舞台を楽しむ機会を提供することができる。今後,同社は,美術館,博物館などの文化劇術施設,娯楽,スポーツ,観光施設などでの鑑賞・ガイドシステムとして利用を促進していくとしている。