NICTの光時計,UTCの歩度を初めて校正

情報通信研究機構(NICT)は,ストロンチウム光格子時計を用いて,光時計として世界で初めて直近の協定世界時(UTC)の歩度校正に寄与した(ニュースリリース)。

実社会においては,より高精度な時刻情報がますます重要になり,参照する国際的な時刻としてUTCが用いられる。UTCは,世界中の400台以上もの原子時計の情報を用いて,国際度量衡局(BIPM)がその重み付き平均を算出して生成する。

近年は光時計の進歩が目覚ましく,従来の周波数標準を上回る性能を示しているため,より高精度な光時計によるUTCの校正が待たれていたが,装置が複雑な光時計は,その精度を維持しつつ長期的に再現性良く運用することが困難であり,また,系統誤差の評価に時間を要するため,これまで直近のUTCの歩度校正は実現していなかった。

今回,NICTは,開発した光格子時計を2018年12月2日から12日までの10日間にわたり90%以上の時間稼働率で運用し,光格子時計が刻む「秒」を基準に10日間のUTCの歩度を評価した。その結果が毎月BIPMによって実行される校正値決定に採用され,同時に運用したパリ天文台と共に,光時計により,直近のUTCの歩度を初めて校正した。

この校正に寄与する資格を得るには,世界中の周波数標準研究者によって構成されるCCTFの国際作業部会から認定を取得する必要がある。この取得のために,NICTは,まず,光格子時計の性能を評価し,この光格子時計が刻む「秒」を基準に,2016年4月から9月と2018年2月の7か月分の過去のUTCの歩度を評価し,2018年11月に作業部会に報告した。

この評価結果は,同期間の1次及び2次周波数標準の評価結果と高い整合性があり,NICTは,同年11月末に,パリ天文台に続き,光時計としては2例目となる2次周波数標準の認定を取得した。

加えて,NICTの校正値は,BIPM地球時という後処理で生成されるさらに高精度な研究用時刻の算出にも取り入れられた。BIPM地球時は,1次及び2次周波数標準がUTCを評価した期間の時刻もその評価結果を用いて校正されており,今回の光格子時計による校正値も反映させた,現在得られる時刻として最も歩度が秒の定義に近いものとなる。

CCTFでは,2026年ごろに「秒」の定義をセシウム原子のマイクロ波遷移から,原子の光学遷移に改定することを検討しているという。NICTは世界に先駆けて行った今回の研究が契機となり,UTCの歩度校正に世界中の多くの光時計が参加するようになれば、国際的な標準時の精度が向上するとしている。

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