三菱電機と産業技術総合研究所(産総研)は,工場での生産前に必要となる,FA(ファクトリーオートメーション)機器の調整やプログラミングなどの生産準備作業を大幅に効率化するAI技術を開発した(ニュースリリース)。
多品種少量生産が求められる生産現場において,FA機器やシステムの調整,プログラミングなど生産準備作業の工数が増えている。これらの作業には独自のノウハウをもつ熟練技術者が必要で,その不足が課題となっている。
この課題に対し,三菱電機はサーボシステム・レーザー加工・ロボット組み立てへのAIアルゴリズムの実装と改良・評価を担当し,産総研はAIを活用した最適化・画像認識・データ分析技術の提供を行ない,開発に取り組んだ。
サーボシステムでは,パラメーターを熟練技術者でも調整が困難な8種類720個に拡張してきめ細かな制御が可能なシステムを構成し,AIを活用したパラメーターの自動調整に取り組んだ。その結果,従来は熟練技術者が1週間かかっていたサーボシステムのパラメーター調整を1日で完了させ,さらに位置決め時間を最大20%短縮することができた。
レーザー加工機を用いた板金切断加工では,従来は,熟練技術者が加工面を目視して加工品質を判定し,これに応じて適切に加工条件を変更して,加工品質を向上させていた。今回,加工面の画像から加工品質を熟練技術者と同等レベルで自動的に判定する技術を開発した。さらに,判定結果に基づいてレーザー加工機の操作員が自分で加工条件を変更して加工品質を向上させる標準的な手順も開発した。
産業用ロボットでは,従来はロボットの動きを実現するプログラムの作成よりも,この異常処理プログラムの作成に多くの時間を費やしていた。今回,ロボットの動作時に得られる力覚センサーの出力から異常発生状況を学習させる技術を開発した。これにより,システムごとに個別作成していた異常状態判定アルゴリズムの開発が不要となり,異常処理プログラムの作成時間を3分の1に削減した。
両者は今回の開発により,生産準備作業にかかる時間を短縮でき,工場の生産性向上に大きく貢献するとしている。