筑波大ら,先端光科学用の第一原理計算ソフトを開発


筑波大学と自然科学研究機構分子科学研究所,量子科学技術研究開発機構,東京大学,独マックスプランク物質構造動力学研究所,蘭ウィーン工科大学,米ワシントン大学らは共同で,物質科学の第一原理計算法に基づき,先端の光科学研究に役立つソフトウェアSALMONを開発した(ニュースリリース)。

このソフトは,筑波大学と分子科学研究所の研究者を中心に長年進めて来た,光と物質の相互作用に関する研究を基に開発されたソフトウェア。これは,分子からナノ構造,固体まで,多様な物質群に対して,光との相互作用を記述することができる第一原理計算ソフトウェアとなる。オープンソースソフトウェアとして提供され,無償でウェブサイト(http://salmon-tddft.jp)からダウンロードし利用することができる。

SALMONには2つの特長がある。1つは,最先端の光科学実験を丸ごと計算機の中でシミュレーションする数値実験室としての機能。光のパルス波形や振動数,物質の種類や形状を自由に設定して計算することができる。このようなシミュレーションは,準備に手間のかかる実験を行う前に結果を予測し,実験から直接得ることが困難な原子サイズのミクロな空間で何が起きているのかを調べるのに役立つ。

SALMONの前身となるプログラムは,アト秒科学や近接場科学,レーザー加工といった先端の光科学研究に用いられてきた。2つのプログラムを統合したことで,最先端の光科学研究に大きく貢献することが期待されるという。

もう1つの特長として,SALMONには多数のプロセッサを効率的に利用する並列化が高度に実装されており,スーパーコンピューターを用いた大規模な並列計算により,数千原子を含む物質の光応答を計算することができる。

また,シミュレーションにあまり慣れていない研究者でも容易に使うことができるよう配慮がなされている。SALMONのウェブページには,インストールの方法やソフトウェアの使い方が詳しく説明されているが,加えてソフトウェアの利用方法に関する講習会が定期的に開催されている。さらに,HPCIプリインストールアプリとしての運用,物質科学計算パッケージソフトへの搭載で,普及を促進させている。

研究グループは今後,さらに機能を拡張し利便性を高めることで,SALMONを光科学分野のさまざまな研究に有効なソフトウェアとして発展させたいとする。第一原理計算法を用いた電子の運動に対する計算に加え通常の電磁場解析機能を充実させること,電子のスピン自由度を考慮し磁性体の光応答を記述できるようにすることなどを計画しているという。

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