分子研ら,量子もつれを大規模高速シミュレーション

著者: 梅村 舞香

分子科学研究所(分子研),独Universität Heidelberg,中国Shanxi Universityは,ほぼ絶対零度に冷却した3万個の原子を0.5μm間隔で格子状に整列させ,10ピコ秒だけ光る特殊なレーザー光で高精度に操作することによって,磁性材料の超高速量子シミュレーションに成功した(ニュースリリース)。

量子コンピュータ・量子シミュレータ・量子センサなど,電子や原子の波の性質を活かした質的に新しいテクノロジーの開発競争が激化している。

しかし,電子や原子などの量子力学的な粒子がつくる量子状態やその操作は,外部環境や操作レーザーなどが及ぼすノイズによって容易に劣化され,これが,例えば量子テクノロジーのひとつである量子コンピュータ開発などを困難にしている。

研究グループは,ほぼ絶対零度に冷却した3万個の原子を0.5μm間隔で格子状に整列させ,10ピコ秒だけ光る特殊なレーザー光で高精度に操作することによって,磁性材料の超高速量子シミュレーションを行ない,量子力学的な粒子に特有の相関である量子もつれが形成される過程を,世界最速の600ピコ秒でシミュレートして解き明かすことに成功した。

超高速量子シミュレータは,同研究グループが昨年,世界に先駆けて実現した超高速レーザーによってリュードベリ・ブロッケードを回避するという全く新しい超高速量子コンピュータの手法を,量子シミュレータへ応用したもの。

信頼性のある量子シミュレーションを実現するには,ノイズに打ち勝ち高速・高精度に行なうことが鍵となる。今回実現した世界最速の量子シミュレーションは,従来のシミュレーション速度を3桁加速し,ノイズよりも1000倍以上速いので,ノイズの影響を無視することができる。

物質を構成する原子や電子などの量子力学的な粒子に現れる特有の相関である量子もつれは,大規模なシステムや実際の材料では測定することが非常に難しいとされている一方で,量子の世界を理解するためには欠かせない概念。

研究グループは,大規模な量子もつれの形成を超高速にシミュレートした今回の成果によって,量子コンピュータ・量子ネットワークに必要不可欠なリソースである量子もつれを,将来の実用レベルに近い大規模なシステムで理解し,量子テクノロジーの発展に貢献するとしている。

また,磁性材料の量子シミュレーションによって,今後,磁性など物質の物理的な性質の起源について理解が進み,量子力学的な効果を利用することで飛躍的な機能を示す次世代デバイスや機能性材料の設計に対して指針を与えることが期待されるとしている。

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