京大ら,世界最大の超広帯域量子赤外分光を実現

京都大学と島津製作所は,波長2μm~5μmという広い波長域で赤外光子を発生する超広帯域量子もつれ光源を開発,それを用いた量子赤外分光に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

量子赤外分光は,可視域と赤外域に発生する「周波数量子もつれ光子対」を利用することで,一般に用いられているシリコン光検出器と可視域の光源のみを用いて赤外分光を行なうことが可能となり,装置の飛躍的な小型化や高感度化が期待されている。

しかし,これまでは,量子もつれ光の帯域が赤外域で狭い範囲に限られており,量子赤外分光の帯域を制限していた。

今回研究グループは,赤外域で広い周波数帯域にわたり量子もつれ光を生成できるチャープ擬似位相整合素子を独自に開発,2μm~5μmという広い波長域にわたる量子赤外分光に世界で初めて成功した。

今回開発した擬似位相整合素子は,周期的に素子の分極が反転した構造を持っている。擬似位相整合素子から発生する量子もつれ光の光子対の波長の組み合わせは,その分極反転周期で決まる。従って,分極反転周期を少しずつ変化させることで,広い帯域に渡って量子もつれ光子対を発生させることができる。

研究グループは,マグネシウム添加定比タンタル酸リチウム(MgSLT)と呼ばれる物質に対して,チャープ擬似位相整合構造を設計・製造した。この素子の右端からレーザー光を入射すると,左端から可視光子と赤外光子の対である量子もつれ光が発生する。

発生した量子もつれ光の可視光子を分光器で測定した結果,2μm~5μmという超広帯域赤外光子に対応する可視光子が発生していることを確認した。

可視域の励起レーザー光をチャープ擬似位相整合素子に入射すると可視光子と赤外光子からなる量子もつれ光が発生する。この量子もつれ光を,波長フィルターにより赤外光子と,可視光子および励起光に分離したのち,それぞれ鏡で反射させ,再びチャープ擬似位相整合素子に入射する。このとき,量子干渉により,それらの2つの経路長に応じて発生する可視光子の量が増減する。

赤外光子側の反射鏡の位置を変化させながら得られた干渉縞をフーリエ変換することで,研究グループが以前開発した量子フーリエ変換赤外分光法により,赤外域のスペクトルを算出した。

多様なサンプルを用いて可視の光源と検出器を用いて取得した量子赤外分光は,従来のFTIRの結果とよく一致しており,超広帯域でかつ高い分解能でスペクトルを取得できていることが分かった。

研究グループは,この成果は,量子赤外分光だけでなく赤外域の量子イメージング,さらには将来の量子コンピューターの実現にも寄与することが期待できるとしている。

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