熊本大,「不知火菊」にしみ抑制効果を発見

熊本大学と再春館製薬所は共同で,加齢関連タンパク質であるアンジオポエチン様因子2(ANGPTL2)の過剰な作用が,皮膚関連細胞株のマウスメラノーマ細胞株やヒト表皮角化細胞株においてしみの原因となるメラニンの産生促進をもたらすこと,また不知火菊(観賞用菊)抽出物がANGPTL2の産生抑制を介してメラニン産生を抑制できることを見出した(ニュースリリース)。

皮膚組織において,紫外線暴露などに起因する炎症が生じた場合,紫外線から皮膚を守るためにメラニン色素の産生が促進され,このメラニン色素の産生が過剰に応答した場合,しみの原因となる。

一方,タンパク質「ANGPTL2」は,加齢に伴い様々な組織で産生が増加し,その結果,細胞の様々な活動に重要なエネルギー産生の低下や慢性炎症を引き起こし,加齢に伴ってその発症が増加する加齢関連疾患(糖尿病,心血管病,がんなど)の発症・進展を促進するタンパク質として注目されている。また,常に紫外線暴露される肌が露出している部分の皮膚は,紫外線暴露の少ない部分の皮膚と比較して,ANGPTL2の発現・産生が増加することが知られている。

今回研究グループは,皮膚関連細胞株であるマウスメラノーマ細胞株(B16),ヒト表皮角化細胞株(HaCaT)を用いた研究により,ANGPTL2の作用とメラニン産生との関連について解析し,以下のことを明らかにした。

1)しみの原因の一つである紫外線の暴露によって,マウスメラノーマ細胞株やヒト表皮角化細胞株においてANGPTL2の産生が誘導される。
2)ヒト表皮角化細胞から ANGPTL2 産生が増加すると,ANGPTL2作用が促進され,メラニン産生を促す α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH),エンドセリン-1(ET-1)の産生が増加する。
3)マウスメラノーマ細胞からANGPTL2産生が増加すると,ANGPTL2作用が促進され,メラニン産生を促す酵素チロシナーゼの活性が上昇し,メラニン産生が増加する。
4)ANGPTL2発現・産生の抑制効果を有する有用植物として見出した不知火菊抽出物に,メラニン産生を促す酵素の活性抑制,メラニン産生抑制作用がある。

研究グループは,現在,不知火菊抽出物に含まれるANGPTL2の発現を抑制する特定成分の同定も行ない,すでに応用されている化粧品以外への応用など,さらなる研究の展開が期待できるとしている。

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