工繊,プラズマが操作できることを発光画像で検証

京都工芸繊維大学は,電子プラズマの数密度を変化させることで,電子プラズマの直径を能動的に操作できることを発見し,イオンプラズマと電子プラズマの直径を合わせることに成功した(ニュースリリース)。

プラズマの巨視的な集団運動を取り扱う際,プラズマは電気的に中性で,イオンと電子は一緒に運動するという1流体プラズマ(MHD)モデルが用いられる。近年,イオン群(イオンプラズマ)と電子群(電子プラズマ)がそれぞれ独立の集団運動を行なうという2流体プラズマモデルが提案されている。

しかし,その状態は実験的に見つかっていない。その検証には回転楕円体であるイオンプラズマと電子プラズマの直径を合わせることと,イオンプラズマと電子プラズマの数密度の値を正確に制御することが必要となる。

今回の研究では,静電ポテンシャル井戸と一様磁場を用いて,イオンプラズマと電子プラズマを円筒型真空装置内に閉じ込めた。まず初めに,イオンプラズマと電子プラズマをそれぞれ別々の領域に閉じ込めた。

その後,イオンプラズマをネストトラップ領域へと移送して,電子プラズマと重畳させた。ある一定時間そのままの重畳状態を維持した後,イオンプラズマ(あるいは,電子プラズマ)を蛍光盤付きマイクロチャンネルプレートへと排出し,発光画像からイオンプラズマ(あるいは,電子プラズマ)の2次元画像を計測した。

電子プラズマ直径の能動的制御を行なわない場合,重畳前のイオンプラズマと電子プラズマの直径は,それぞれ1.77cmと0.28cmだった。これらプラズマの直径は,それぞれのプラズマの剛体回転周波数と相関しており,その剛体回転周波数はプラズマ数密度で決まる。

今回,研究グループは,電子プラズマの数密度が,電子プラズマを生成するためのフィラメント数とそれらの加速電圧で変化することを実験的に突き止めた。さらにそのフィラメント数と加速電圧をパラメータとして,電子プラズマの直径の変化を正確に測定した。

測定結果より,加速電圧が−8V,フィラメント数が3のとき,電子プラズマの直径を1.84cmまで大きくすることができた。これをイオンプラズマの直径と比べると,差異はわずかに4%であり,両プラズマの直径を等しくすることに成功した。

次に,イオンプラズマと電子プラズマの数密度の違いについては,電子プラズマの直径が0.28cm から1.84cmとなることで,数密度は5×1013m−3から7×1011m−3と下がる。この一方で,これまでの実験より,イオンプラズマの数密度は,イオンプラズマの直径を一定値に保ちつつ,2×1011m−3から 2×1012m−3まで変化させることができた。

研究グループは,今回の研究により,精密な2流体プラズマ状態を作り出すことが可能となるとし,さらに,2流体プラズマ実験において重要なパラメータとなっているイオンプラズマと電子プラズマの数密度比の操作も可能となるとしている。

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