東レは,ガラス並みの透明性と世界最高レベルの遮熱性を兼ね備えた遮熱フィルムを開発した(ニュースリリース)。
現在,世界規模で省エネ,CO2削減が求められており,その対策の一つとして建物での冷房負荷の削減に対するニーズが高まっている。冷房負荷を削減する有効な対策として,複層ガラスや遮熱フィルムなど太陽からの赤外線をカットする遮熱部材が用いられているが,透明性と遮熱性の両立が求められていた。
そこで,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プログラムの助成先である東レは,独自のナノ積層技術と革新的な層配列デザインを導入することにより,太陽光の中の温度上昇の原因となる赤外線を選択的にカットする,遮熱フィルムの開発に成功した。
これまでナノ積層フィルムで用いられてきた層配列デザインでは,赤外線の反射性能を高めようとすると,原理上,色づきの原因となる可視光の反射も付随して発生する。そこで,フィルム各層の厚みと材料の設計において革新的な層配列デザインを導入し,可視光の反射を抑制しつつ赤外線カット性能のみを向上させ,世界最高レベルの遮熱性を達成した。
この層配列デザインでは,数百層もの層の厚みを1層ごとにわずか1nm単位で制御する必要がある。そこで,独自の流動シミュレーション技術に基づく装置設計と,超高精度な製膜プロセスを組み合わせることで,たとえば,1nmの層の厚みでも,フィルム全幅にわたって均一に制御することを可能にした。これにより,オフィスビルの窓ガラスにも対応できる大面積の遮熱フィルムも提供できるとする。
今回開発した遮熱フィルムについて,東レの共同研究先である産業技術総合研究所で,冷房負荷の中から日射に起因する成分を取り出す新しい測定手法を用いた遮熱試験を行なった。その結果,通常のクリアガラス対比39%,市販の高性能・透明遮熱フィルム対比11%の冷房負荷削減効果を確認したという。
NEDOと東レは,今回開発した遮熱フィルムの赤外線反射領域の適正化や可視光線の反射抑制を進め,さらなる遮熱性能の向上を図るとともに,3年後の実用化を目指して開発を進めるとしている。