三菱マテリアルは,アルミナ基板の約半分の熱抵抗を実現した車載用高輝度LED向けメタルベース基板「nBoardTM」を開発したと発表した(ニュースリリース)。
EV等の次世代自動車のヘッドランプでは,従来の光源に代わり,高輝度LEDの採用が進んでいる。これまでの高輝度LEDには,高い放熱性が要求されることから,窒化アルミニウム基板やアルミナ基板に代表されるセラミック基板が主に使用されてきた。
しかし,LEDヘッドランプの採用増加とともに低価格化の要求が高まり,セラミック並みに高い放熱性とコスト優位性をあわせ持つ,銅やアルミニウムを使用したメタルベース基板の開発が期待されていた。
メタルベース基板の放熱性を高めるには,銅やアルミニウムの基板の上に構成する樹脂絶縁層の熱伝導率の向上とその膜厚を薄くすることが必要。これまでは樹脂絶縁層に数十μmスケールのセラミックフィラーを充填することにより熱伝導率の向上を図ってきた。
しかし,この方法ではセラミックフィラーが大きいため,樹脂の絶縁特性の低下要因になる上,膜厚も十分下げることができないというデメリットがあった。
同社はこれらの課題解決のため,複合材の設計と製造プロセスに関する独自の技術を駆使し,メタルベース基板の樹脂絶縁層の薄膜化開発を行なった。まずナノフィラーを使うことにより薄膜化を実現した。さらに,そのナノ粒子を均一に高充填するナノコンポジット技術を開発することで,耐電圧の低下を抑制しながら熱伝導率を向上させることに成功した。
これらの技術により,耐電圧を落とすことなく樹脂絶縁層の膜厚を従来の80~120μmから20~30μmと約4分の1に極薄化し,メタルベース基板の熱抵抗もアルミナ基板の約半分になったという。これにより,従来のセラミック基板の代替品として,放熱性はそのままにコストダウンを達成できるとしている。