東北大学と東京大学の研究グループは,最先端の原子分解能走査透過型電子顕微鏡法と第一原理計算を駆使し,従来知られている結晶,アモルファス,準結晶のいずれでもない第四の固体物質というべき新たな原子構造を発見した(ニュースリリース)。
研究グループは,結晶中の格子欠陥である転位や粒界・界面を対象にして,原子構造の解析や格子欠陥を制御した新機能材料の開発を試みてきた。今回,スパッタリングにより作製した厚さ 20nm程度の酸化マグネシウム(MgO)薄膜層を対象に,最先端の原子分解能走査透過型電子顕微鏡法を行ない,種々の酸化物の粒界や界面近傍の原子構造を詳細に観察した結果,従来知られている酸化物の構造とは全く異なる,ランダム性を有する特異な原子構造を発見した。
この新構造は,一次元の周期性と二次元のランダム性が共存し,”一次元規則結晶”と名付けられた。このような特異な構造は,MgOだけでなく酸化ネオジウム(Nd2O3)など他のセラミックス材料の界面近傍にも存在することが確認された。さらに,第一原理による理論計算からも,この構造は安定に存在しうることが明らかにされた。また,母相の酸化物が絶縁体であるのに対して,この新構造は新規ワイドバンドギャップ半導体の性質を持つことも実験・理論の両面から実証された。
この発見は,1984年に準結晶が発見されて以来,実に34年ぶりの発見となるもの。この新物質は,一方向には周期性を有するが他の方向はランダム(無秩序)に配列するという極めて特異な構造を有しており,”一次元規則結晶”と名付けられた。一次元規則結晶は,これまでには無い新しい機能を発現することが期待できるという。
研究グループでは今後,この発見を起点に,新規機能を有する新たな物質の探索・設計・開発につながることが期待されるとしている。