大阪大学は,柔らかいチューブをディスプレー装置として用い,チューブ内に液体などの流体を流し込み,その位置やサイズを正確に制御することで様々な情報を表示可能なディスプレーシステムを開発した(ニュースリリース)。
タブレットやスマートフォンのような,入力面と出力面が一致するようなタッチディスプレーは,表面形状は平面である場合が多く,2次元に沿った形でしか情報を表示できない。そこで研究グループは,様々な表面形状に適用可能なフレキシブルなディスプレーの開発を目指し,開発に取り組んできた。
チューブをディスプレーとして使用するために,チューブ内の流体の位置やサイズを正確に制御するのは容易ではない。ディスプレーの表示要素として,透明流体と着色流体を多数,チューブ内に配置するが,それぞれの流体は分離した状態のまま移動させ,互いに混ざり合わないような組み合わせを見つける必要がある。
さらにチューブについても,チューブ径が太すぎると液だまりが発生したり,表面張力が失われ流体がその形状を保てないなどの問題が発生する。流体の移動はポンプを利用するが,流体が増えるに従い,流体とチューブ間の摩擦が増大し,指定した位置に流体を配置できないという問題が発生する。
今回研究グループは,これらの問題を一つずつ検討し,最適なチューブ材質,チューブ径,ポンプ圧,ポンプスピード,流体などを決定した。特に流体としては様々検討した結果,着色水と空気を2相の流体として用い,チューブとして内径4mmのペルフルオロアルコキシフッ素樹脂製チューブを用いることが最適であることを見いだした。
また,着色水を指定サイズとするため,さらに着色水同士の距離を制御するため(すなわち,着色水同士の間に空気を指定量入れるため)に,スラグ流を利用している。スラグ流とは,異なる相の流体が交互に流れる状態を指し,これら異なる相の流体を最適な流量で合流させると発現する。
このディスプレー装置では,着色水と空気の2相の流体をポンプによって正確に合流させ,指定したサイズの着色水と,空気を用いて指定した着色水同士の距離を生成することに成功した。また,合流部分に6方弁を利用し,減法混合の三原色であるシアン・マゼンダ・イエローと白色の着色水を適宜混ぜ合わせることで,自由な色の液滴を作成し,通常のディスプレーのように多数の色を用いた情報提示を可能としているという。
研究グループは今後,ディスプレーサイズに関するフレキシビリティの確保手法,複数のチューブを同時に組み合わせることによる高精度化と液滴の制御手法などを検討するとともに,デジタルサイネージとしての利用や,ウェアラブルディスプレーとしての実用化を進める予定としている。