京都大学とスタンレー電気は,次世代型の指向性白色光源開発に成功した(ニュースリリース)。
広く普及している白色LEDの次の照明として,青色LEDの替わりに青色レーザーダイオードを用いる高輝度白色光源が一部実用化されている。このタイプの光源は青色レーザーと,青色を吸収して黄色に光る蛍光体からなるが,二つの問題点があった。
具体的な問題の一つ目は,青色レーザーが指向性をもって直進するのに対し,黄色蛍光は全方向に放たれるため,角度によって青色と黄色の割合が変わり,均一な白色が得られないこと。
二つ目はハイパワーの青色レーザーが入射すると,黄色蛍光体が加熱されるが,従来の白色LEDでは黄色蛍光体は粉末をプラスチックのバインダーで固めたものを使用しているため,加熱によりバインダーが劣化してしまうこと。また,高温になると蛍光の発光が弱くなる「温度消光」と呼ばれる問題があった。
研究グループは以前,アルミニウムのナノアンテナにより,アレイ上に塗布した蛍光体薄膜(厚さ650nm)からの発光を大幅に強めることに成功していた。今回はその技術を応用し,厚さ200㎛の黄色蛍光体基板の上にナノアンテナを作製し,青色レーザーと組み合わせて,指向性白色光源を設計,試作した。
その結果,二つの問題を解決することができた。基板からの黄色蛍光がアレイを通過する際にアンテナ作用を受け,基板垂直方向に放出されるため,吸収されずに透過する青色レーザーと進行方向が揃い,角度依存の少ない均一な混色が実現した。また,垂直方向に光が集まるので,垂直方向ではナノアンテナの無い場合に比べ7倍の発光増強が実現した。
今回プラスチックのバインダーが無い蛍光体基板を使ったので,バインダーの劣化を考える必要が無くなった。蛍光基板は蛍光体粉末をバインダーで固めた蛍光体層よりも熱伝導度が高いため,温度が上がりにくく,温度消光の問題が解消したという。
研究グループは,蛍光基板内で発生した蛍光をすべて前方に放つことができれば,理論的にはさらに蛍光強度を高められるとし,今後は強度を理論に近づける研究を継続するとともに,この技術を実際の照明に組み込む研究に取り組むとしている。