理化学研究所(理研),東京大学,蘭ラドバウド大学は,代表的な酸化物半導体である酸化亜鉛中の電子が強い磁場中で,液体状態と固体状態の混じった特殊な性質を示すことを見いだした(ニュースリリース)。
水のような物質に気体・液体・固体の状態があるように,物質中の電子にも気体・液体・固体に相当する状態が存在する。このような電子状態の変化は,欠陥や不純物が極めて少ない半導体の二次元電子について,温度・外部磁場・電子密度を変化させながら電気抵抗を測定することで調べることができる。
また,強い磁場中では,電子と2本の磁束量子が結合した「複合粒子」が形成されるが,この複合粒子と電子の状態変化との関係は不明だった。
今回,研究グループは,欠陥や不純物の少ない酸化亜鉛薄膜中の電子に強磁場を加えると,二次元電子が互いに反発し合い,液体状態から固体状態へ遷移していく様子を観測した。その遷移過程では,「固体状態の電子と液体状態の複合粒子の混合状態」が存在することが明らかになった。
これは,酸化亜鉛中の電子の有効質量が通常の半導体よりも5倍程度大きいために,電子相関が特に強くなった結果,発現したものと考えられるという。
これまで実際の材料は不純物や欠陥の効果が大きく,電子相関の効果を純粋な物理系として研究することが困難だった。研究グループは今回の研究により,多彩な電子機能を実現する電子相関において,より普遍的な物理現象の解明と新たな機能創出につながるとする。
さらに今後,電子相関の強さを電子の密度や磁場で制御することにより,トポロジカル量子計算を可能にする電子状態を安定化する要因を解明できるとしている。