浜松ホトニクスは,LiDAR向けに暗電流を大幅に低減することに成功したInGaAs アパランシェフォトダイオード(APD)「G14858‐0020A」を製品化する。
自動運転に欠かせないキーデバイスであるLiDARはレーザービームを周辺に照射し,反射光を計測して対象物の有無とその距離を測定する。いわば自動運転車の眼となるデバイスなので世界中で開発競争が繰り広げられている。
自動運転ではより遠くの状況を把握する必要があるため,LiDARの測定距離は重要な課題となっている。しかし,より遠くにビームを飛ばすためにパワーの大きいレーザーを使用すると,アイセーフの問題が起こる。そこで一般的に使用されている900nm帯の赤外レーザーに代わって,より波長の長い1500nm帯のレーザーを使うアイデアがある。
900nm帯のレーザーに対する受光素子には安価なSiフォトダイオードが用いられてる。しかし,Siフォトダイオードは1500nm帯のレーザーには感度を持たないため,InGaAsを用いたフォトダイオードが必要となる。
今回,浜松ホトニクスが展示する「G14858‐0020A」は,新たな素子構造とプロセス工程を改善することで,暗電流は50nAと,同社従来製品と比べて大幅に低減することに成功しており,より高感度な長距離型LiDARの開発が期待される。同社では半年以内にサンプル出荷を開始する予定。また,アレー化についても開発を進めている。
ただし,InGaAs APDの欠点である価格については,もともと基板が高価であることから依然としてSiフォトダイオードの1.5~2倍程度はするという。今後の低価格化が1500nm帯LiDARの成功のカギとなっており,その実現が期待される。