国立天文台は,大質量星が最期に起こす超新星爆発直前に,大量のガスを放出していることを解明した(ニュースリリース)。
超新星爆発では,星の中心で生じた衝撃波が表面に達した際に「ショックブレイクアウト」という現象が起こり,星が急激に増光すると予測されている。しかし,増光の継続時間が数時間以下とたいへん短いために観測することが難しく,この現象についての理解はほとんど進んでいない。
超新星のショックブレイクアウトによる増光を捉えようと,チリ大学の観測チームは,2013年から2015年にかけてチリにあるブランコ望遠鏡を用いて赤色超巨星の大規模観測を行なった。この観測では,26個の赤色超巨星の爆発直後の超新星を捉えることに成功したにも関わらず,予測されていたショックブレイクアウトによる増光を確認することはできなかった。
一方で,観測されたほとんどの超新星の光度変化が,理論的に予測されているよりも早く明るくなっていることが分かった。理論予測より早く明るくなる超新星はこれまでにもいくつか観測されていたが,今回理論予測と異なる光度変化を示す超新星がこれほど多く観測されたことは予想外であった。
研究グループは,超新星の光度が従来の理論予測よりも早く明るくなるのは,星から爆発の数百年前という直前に放出された厚いガスに取り囲まれていることが原因と考えてきた。厚いガスに囲まれた超新星がどのように光るのか,ガスの密度や速度などの条件を変えた518通りのシミュレーションを行ない,その結果をチリ大学の観測データと詳細に比較した。
その結果,爆発直前の赤色超巨星のごく近傍に太陽質量の約10分の1というきわめて高密度のガスが存在する場合に,今回の観測結果をよく説明できることが分かった。ショックブレイクアウトによる増光は,星を取り囲む厚いガスによって隠されてしまうために観測することが難しい。また,爆発によって星から高速で広がる噴出物がこの厚いガスに衝突する際に衝撃波が発生し,爆発から数十時間という短い時間で一気に光度が明るくなる。
これは,星を取り囲む厚いガスの存在を考えない従来の理論予測よりも短い時間となる。この結果は,超新星爆発直前の赤色超巨星が,なんらかの理由で多くのガスを放出していること,そしてそれが普遍的な現象であることを示すものだとしている。