筑波大,アルミニウムに新たな電子分布の存在を確認

筑波大学の研究グループは,大型放射光施設SPring-8の高エネルギー放射光X線粉末回折により,アルミニウムの精密な電子分布を観測し,これまで知られていなかった電子分布の存在を確認した(ニュースリリース)。

精密な電子分布の観測には,多数の反射の構造因子が必要となる。研究では,放射光粉末回折による多数の構造因子の精密測定により200本を超える反射を利用し,電子分布を観測した。

具体的には,大型放射光施設SPring-8の粉末結晶構造解析ビームラインBL02B2の大型デバイ・シェラーカメラおよび,精密観測のため,30Kの低温下で,波長0.328Åの高エネルギーX線を用いて,アルミニウムの粉末X線回折のデータを測定した。また,リートベルト法と多極子展開法の組み合わせにより,アルミニウムの電子分布を観測した。第一原理計算によりアルミニウムの電子分布を求め,観測値との比較を行なった。

その結果,過去の研究と同様の電子密度の集積が確認された。さらに詳しく電子密度分布を調べたところ,アルミニウム原子の周りに方向性を持った電子分布の存在が確認された。この電子分布は,過去の実験や理論計算で全く予測されていなかったもので,その起源は,原子軌道的な電子を示していることがわかった。

アルミニウムは,自由電子のような伝導電子が結晶中に存在するモデルで理解されてきたが,そのヤング率やせん断応力などの機械的特性は力を加える方向によって異なることが知られている。方向性を持った電子分布は,こうした機械的特性に説明を与えることを可能にするという。

研究では,アルミニウムの金属結合において,弱い原子軌道的な電子の存在を観測した。このような電子分布は,アルミニウムの金属結合の理解に新たな知見を与えるもの。例えば,理論計算手法の改良や手法の検証に利用することができる。

さらに研究グループでは,他の単純金属でも金属結合の精密観測を進めている。これらの結果と各金属の性質との結びつきを解明し,金属材料の物性の電子スケールからの理解を推し進めていくという。また,この結果に基づく合金での材料設計の指針の確立を目指すとしている。

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