明治大学は,雌性マウスを用いた実験により,光を浴びた次の日の体内時計の針の進み方が性周期のステージで異なることを明らかにした(ニュースリリース)。
睡眠-覚醒リズムなどに代表される概日リズムは,光によりそのリズムの基となる体内時計の針を進めたり,遅らせたりする基本特性がある。概日リズムの光反応性は位相反応曲線として表現することができる。しかしこれまで,雌性動物は性周期による血中ホルモン濃度などの生理的な変動があるため,無処置の状態での位相反応曲線は調べられていなかった。すなわち,性周期による概日リズムの光反応性の違いは明らかではなかった。
研究グループは,2015年に輪回し活動リズムを記録するだけで性周期のステージが連続的に把握できるアルゴリズムを開発した。研究ではその非侵襲的な方法を用い,性周期のステージごとの概日リズムの光反応性の検討を行なうことが可能になった。
研究では,雌性マウスの輪回し活動リズムを記録するだけで,マウスの性周期のステージを判定できるこのアルゴリズムを用い,性周期の各ステージにおいて,15分間の光照射(200-300ルクス)に対する輪回し活動リズムを指標とした位相反応曲線を作成した。
その結果,雌性の位相反応曲線は雄性のものとほぼ同じであること,光を浴びた次の日の活動開始期を指標とした位相反応曲線は性周期のステージごとに異なることが明らかになった。特に,通常光に対して感受性が低い昼の時間帯において,発情後期の動物は光に対して時計の針が前に進む反応を示した。
これは,女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが概日リズムの光反応性の大きさに深く関わることを示している。特に女性でも月経期では,普段と異なり日中の光が時計の針を動かし,次の日の体内リズムのズレを引き起こす可能性があるという。
性周期による概日リズムの光反応性の違いがわかったことで,これらの結果は,今後の概日リズム(体内時計)研究の発展に貢献するとともに,女性特有の睡眠障害などの概日リズムに関連した疾患の発症機構の解明やその治療や対策方法の考案に寄与するものと考えられるとしている。