特許分析による技術力評価を行なうパテント・リザルトは,2018年7月5日までに日本の特許庁に出願されたレーザー加工技術について参入企業に関する調査結果をまとめ,レポート「レーザー加工技術」を作成した(ニュースリリース)。
これは,1993年から2018年7月5日までに日本の特許庁で公開されたレーザー加工技術関連特許を対象に各個別特許の注目度を得点化する「パテントスコア」をベースとして,特許の質と量から総合的に見たランキングを作成したもの。その結果,「総合力ランキング」では,1位 浜松ホトニクス,2位 ディスコ,3位 三菱電機となった。
総合力1位の浜松ホトニクスにおける注目度の高い特許は,半導体ウエハ加工技術であるステルスダイシングに関するもので,後願の特許の審査に先行技術として引用された回数が非常に多いことが特徴。この特許は同社ウェブサイト内のステルスダイシング技術紹介ページにおいて,特許情報の先頭に記載されており,ステルスダイシング技術の基本特許であるとする。
この特許は2000年に出願された基礎出願をもとに優先権を主張して出願されたもので,この基礎出願から分割出願や継続出願といった積極的な権利化活動により,国内外に100件を超えるパテントファミリーを構築している。同社サイトによると,ステルスダイシング技術に関し,総計600件のポートフォリオを構築している。
総合力2位の半導体ウエハ加工メーカーであるディスコは,加工時のデブリの影響を防止する技術に関する特許が,3位の三菱電機はガラス基板に対するレーザー熱処理に関する特許が高い注目度となっているという。
総合力1位と2位の両社はどちらも半導体ウエハのダイシング加工に関する特許の注目度が高いという共通点がある。両社については協力関係にあり,ディスコのダイシング装置における光学系(ステルスダイシングエンジン)を浜松ホトニクスが供給しており,かつ浜松ホトニクスの関連特許ポートフォリオをディスコに包括ラインセンスしている。
浜松ホトニクスはディスコ以外にもステルスダイシングエンジンを提供しており,同技術のリーディング企業だとしちる。なお,浜松ホトニクスの特許は,前述の基本特許を含め満了期限が2020年のものが多いことから,現在は浜松ホトニクスから技術提供を受けている企業のなかには自前での技術開発を進めているところがあるものと推測している。
そこで,浜松ホトニクスの特許と近い内容の出願をしている企業を探す目的で,浜松ホトニクスの特許が先行技術として拒絶を受けた企業を集計した。その結果,拒絶を受けた件数が最も多いのはディスコであり,また拒絶を受けたディスコの特許はステルスダイシングに関する特許分類のひとつであるFターム:4E168 AE01、5F063 CB07が多く付与されているという。
加えてディスコは出願件数の伸びが近年顕著であり,これらの結果から,ディスコは浜松ホトニクスから技術提供を受けながらも自社でステルスダイシングに関する技術開発を積極的に行なっていることが伺えるとしている。