宮崎大ら,太陽光エネルギーの18.8%を水素に変換

著者: sugi

宮崎大学,東京大学,富士通研究所,住友電気工業らの研究グループは,新たに高効率集光型太陽電池から得られる電力を用いて水電解する実用構成システムを設計・構築し,太陽光エネルギーの18.8%(1日平均)を水素エネルギーに変換することに成功した(ニュースリリース)。

太陽電池と水電解装置を組み合わせた水素製造システムでは,宮崎大学らの研究グループが集光型太陽電池と一般的な固体高分子型水電解装置を接続したシステムによって,屋外試験では世界最高効率となる太陽光エネルギーから水素エネルギーへの変換効率24.4%を実証しているが,気象条件の変動などを加味した,屋外太陽光下における高効率で長期的な水素製造の実証試験が望まれていた。

研究グループは,新型の高効率集光型太陽電池に,固体高分子膜を用いた水電解装置と,太陽電池から得られる電力を水電解装置に効率よく供給する電力変換装置(DC/DCコンバータ)を接続し,実際の太陽光下で1日を通して高効率かつ安定的に水素を製造することに成功した。太陽光から水素への1日平均エネルギー変換効率は18.8%であり,実用構成システムにおいて世界最高記録を樹立した。

今回開発した電力変換装置は,時々刻々変化する温度,太陽光強度に追従し,水電解装置に供給する電圧,電流を制御して,常に太陽電池の最大出力電圧になるようにすることで,太陽電池から水電解装置への高いエネルギー伝達効率(90.0%)を実現した。

集光型太陽電池は,レンズなど光学系の設計や,太陽の方向にレンズを正確に向ける追尾に高度な技術を必要とする。今回の実験では,集光型太陽電池モジュールを高精度太陽追尾架台に搭載することにより,実際の屋外日照条件下で1日平均発電効率27.2%(太陽光エネルギーから電気エネルギーの効率)を達成した。

今後,集光型太陽電池の実動作環境下での発電効率は35%まで向上すると見込めることから,水電解における電力から水素へのエネルギー伝達効率80%を考慮すると,太陽光から水素へのエネルギー変換効率は25%に達すると予想されるという。

今回実証に用いた水素製造装置は,大規模太陽光発電システムへの展開が容易であり,水素製造の大規模化において重要な技術となる。集光型太陽電池は通常の太陽電池に比べて高価だが,直射日光の強い海外の高照度地域では,発電効率が高い分発電コストを低減できる。海外での大規模な水素製造に必要なギガワット級の導入が進めば,集光型太陽電池の価格はシリコン太陽電池並みに下がると予測されており,目標とする水素製造コスト1Nm3あたり20円以下へのコスト低減が見込まれるとしている。

キーワード:

関連記事

  • NEDO,太陽光発電の拡大に向け開発実施先を決定

    新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は,「太陽光発電導入拡大等技術開発事業」に係る公募を実施し,提案した37件について外部有識者による採択審査およびNEDO内の審査を経て,24件の実施予定先を決定した(ニュース…

    2025.09.17
  • 東北大,京都はPV×EVで90%のCO2削減が可能と確認

    東北大学の研究グループは,1997年に京都議定書が採択された気候変動対策の象徴都市・京都市を対象に,屋根上太陽光発電(PV)と電気自動車(EV)の統合による環境改善効果を分析し,郊外住宅地で最大90%のCO2削減ポテンシ…

    2025.09.03
  • 東芝ら,建材一体型太陽光発電の実装検証を開始

    東芝エネルギーシステムズ,YKK AP,東京都港湾局,関電工,東京テレポートセンターは,令和7年8月5日より,臨海副都心青海地区のテレコムセンタービルにおいて,次世代型ソーラーセルを活用した建材一体型太陽光発電内窓の実装…

    2025.07.24
  • 東北大,7割の屋根にPV設置で電力自給率85%と試算

    東北大学の研究グループは,日本全国1741市町村を対象に,住宅などの屋根上太陽光パネルと電気自動車(EV)を組み合わせて家庭の電力をまかなうシミュレーションを行ない,大幅な脱炭素効果を明らかにした(ニュースリリース)。 …

    2025.05.27
  • 神大,太陽光で夜も発電する熱放射発電素子構造提案

    神戸大学の研究グループは,半導体のバンドギャップ内に新たに中間バンドを導入した熱放射発電素子において,同じ発電素子で昼は太陽光を,夜や高温環境では熱放射を利用して発電できるようになることを明らかにした(ニュースリリース)…

    2025.04.07
  • 東大ら,可視光で水素の安全/安価な貯蔵/運搬に道

    東大ら,可視光で水素の安全/安価な貯蔵/運搬に道

    東京大学,岡山大学,神戸大学は,可視光エネルギーを利用して,常温で環状アルカンから最大限の触媒の開発に成功した(ニュースリリース)。 地球沸騰化に歯止めをかけるために,化石燃料を燃やしてエネルギーを得る現状のエネルギー生…

    2025.01.14
  • 産総研,高性能を維持できる光触媒のシート化に成功

    産業技術総合研究所(産総研)は,グリーン水素を安価に製造できる可能性を秘めた光触媒-電解ハイブリッドシステムの流通型装置を開発し,水分解の理論電解電圧(1.23V)よりも小さい0.9V以下の電解電圧で水素と酸素を分離製造…

    2024.11.05
  • 東北大ら,水分解光触媒の水素生成面に助触媒を担持

    東北大ら,水分解光触媒の水素生成面に助触媒を担持

    東北大学,東京理科大学,三菱マテリアルは,水に太陽光を当てるだけで水素(H2)を製造できる水分解光触媒上に粒径1nm程度の極微細なロジウム(Rh)・クロム(Cr)複合酸化物(Rh2‒xCrxO3)助触媒を,結晶面選択的に…

    2024.10.07

新着ニュース

人気記事

新着記事

  • オプトキャリア